
百人一首。
この百首という切りのいい数をもって整えられた和歌のアンソロジー。
それは多くも多くの家に置かれていた国民文学でした。この百人一首によって、この国の文化の源は宮廷に発するということが全国津々浦々、ひとつひとつの家庭にまで、情感をもって広まっていったのでした。そのことをわたしに教えてくれたのは、昭和の文人、保田與重郎でした。
年のはじめに家の者が打ち揃い、この家庭の教科書をもって遊びをともにしていたのです。声高く、百の高貴なことばづかいからなる歌が家中に響いていました。
そう、意味よりも先に、声が響いていたのです。
その響きは、わたしたち国民のことばづかいに深い影響を与えて来たに違いありません。それがたとえかるた遊びであったとしても、高貴なことばづかいを耳にするという感覚的な体験の連続は、ぞんざいなことばづかいに対する生理的な嫌悪感をもわたしたちに根づかせ、ことばに対する我が国独特の歴史的な伝統を受け継ぐような、靈(ひ)に対する感官を育んで来たのではないでしょうか。
また、この百人一首は、藤原定家というひとりの人による高いこころざしと深い見識から編まれたもので、ことばの法則、日本人としての美的感覚、情を歌い上げるこよなく深い芸術性、恋愛というものの大切さとその身を切るような切実さ、そして神からのことよさしとしての国の精神と歴史、その悲願までをも包含する、我が国の文化にとって、かけがえのないひとつの大いなる藝術的モニュメントなのです。
わたしたち日本人の生き方の本質的な規範のようなものとしてこの百人一首は存在し続けていたのでした。
そして、その百人一首に収録されている一首一首をからだまるごとを動かし働かせながら声にしてゆくことを、わたしは積極的に多くの人にお伝えしたいと思っています。
それは、古くから伝えられてきた日本人ならではの味わい深く、気高くも尊い精神文化をこれからの人たちに伝えてゆく必要を感じているからです。
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