先日のゴールデンウィーク、5月3日から5日にかけて、二年間にわたる「杜の都で学ぶ シュタイナー学校教員養成講座」(おひさまの丘 宮城シュタイナー学園主催)を終えました。
このたびの教員養成講座は、受講者の皆さんが一堂に会する三日間の講座が計8回。そして毎週一回のオンラインでのクラスが計84回。
オイリュトミーは那須奏身舎を主宰されている渋谷智栄子先生、音楽は神奈川県藤野のシュタイナー学園の古賀美春先生、彫塑は同じくシュタイナー学園の大嶋まり先生、さらには自然観察ではDouglas Newton先生、水彩は宮城シュタイナー学園の山田泉先生、フォルメン線描と手仕事は同じく宮城シュタイナー学園の福島玲子先生と片平健吾先生が担当して下さいました。
その他、様々な事務的、補助的な仕事を福島和明先生が、パンフレット作り、インターネット告知を藤原茜先生が、講座中の毎日の昼食のお料理を宮城シュタイナー学園保護者である及川恵美さん荷って下さいました。
本当に、多くの人が協力し合って、創り上げることができました。喜びと感謝の念いをもって、全員が力を合わせて働いて下さいました。
芸術体験では、なんと豊穣な時間が流れたことでしょう。それらは、すべて、経験豊かな講師陣のお力から生まれた創造的な時間でありました。人は、芸術なしには、決して、人たりえません。そのことが本当にからだのまるごとで感じられた時間であったように実感しています。
こころより、まことに、まことに、感謝いたします。どうもありがとうございました。
さて、わたしは、プログラムの企画作成、毎日のアントロポゾフィー講座と言語造形、そして毎週水曜夜のオンラインでのクラスを担当させていただきました。
このたびの教員養成講座で企図していましたのは、シュタイナー教育ができる教師を育てるということに尽きない、本質的なことが意識されていました。
それは、その人がまさにその人になりゆくための大切な自己教育の積み重ねを身をもって体験することでありました。
アントロポゾフィーという人間学の学び。
そして、豊富な芸術体験。
さらには、毎日のメディテーションの内なる営み。
この三本柱を明確に打ち樹てた講座でした。
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教員養成講座におけるアントロポゾフィー人間学のプログラム
2022年5月 プレ講座 「シュタイナー教育で大切にしたいこと」
2022年8月 こころの育み
2022年12月 精神の目覚め
2023年3月 からだの養いと気質の育み
2023年5月 十二の感官
2023年8月 十二の感官
2023年12月 日本神話「古事記(ふることぶみ)の傳へ」
2024年3月 四季の巡りと日本における祝祭
2024年5月 社会の生きた織りなしを三つに分かつこと
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こうしたアントロポゾフィー講座は、とりわけ、「ことばの精神」「ことばの靈(ひ)」への目覚めを促がす、二年間の教員養成講座を貫くものであったと思います。
それは、ひとりの人がますますその人自身になりゆくために欠かせないこと。
それは、まずは、ことばの力を、芸術的に養うことにあります。ことばをいかに聴き取り、いかに語るか、ということから始まるのです。
ことばの力に目覚めるということがすべての学びの根源にあるのです。
なぜなら、すべての学び、学問は、ことばによって意識化され、会得されるからです。
そして、ことばの力、「ことばの靈(ひ)」に目覚めるということは、自分自身という存在に目覚めゆくことであり、その目覚めた意識をもって自分自身から何かに対して問いを立ててゆく、さらには自分自身に問いを立ててゆく。
これは、「単なる人間」が、「靈(ひ)が留まるもの」、まことの「ひと」になりゆく上で欠かせないことなのです。人は、「ことばの靈(ひ)」によってこそ、ますます、その人自身になってゆくことができるのです。
子どもというもの、人というものは、本当に謎に満ちた存在です。さらには、身の周りに拡がっている自然のあらゆるもの、宇宙にまで拡がる世というもの、それらの謎を解いてゆくということ、それは、人という謎を解いてゆくことから始まる、本当の学びの道なのでした。
そのような学びの道においては、答えが誰かから与えられるのを待つのではなく、みずからで問いを立て、その問いを磨き続けてゆくことによって、時が熟した時にこそその答えがその人のこころに訪れる。
それこそが、まことの学びのあり方だという確信が、講座を企画・実行しているわたしたちにはありました。
その学びの道は長い道のりになってゆくはずです。この教員養成は、その道のはじまりに立つひとつのきっかけでもあります。
そして、おそらくシュタイナー教員養成では初めての試みではないかと思うのですが、新しい教員養成講座のあり方として、毎週一回のオンラインクラスを設けました。
オンラインとはいえ、皆が顔をあわせてシュタイナーの『いかにして人が高い世を知るにいたるか』を通してのメディテーションの学びを少しずつ少しずつ深めて行くことができたのでした。
それは、この養成講座が、靈(ひ)なるものを基礎に据える講座であり、メンバーの意識をこころと靈(ひ)からなるひとつの共同体意識へと成長させて行くことを大いに促してくれたのでした。
学びというものは、個人の営みでありつつ、他者との関係性、ふれあい、交流の中でこそ、養われます。
複数の学び手が、同じ学びを、同じ時期に、同じ場所で最後までなしとげることの意味深さは、かけがえのないことです。
メディテーションを核に据えたシュタイナーの学び「アントロポゾフィー」。
そしてそこから生まれる様々な芸術実践。
それは、ひとりひとりのインディビジュアリティー(わたしのわたしたるところ)を育て、かつ、社会性(人と人とのハーモニー)を養ってゆくのです。
この仙台での二年間の営みは、これからの日本におけるシュタイナー教育教員養成の新しいモデルケースにきっとなります。
わたくし、諏訪が、愛知県の作手村というところで始まった日本で最初のシュタイナー教育教員養成講座第一期に受講生として参加したのは、1994年のことでした。
そのときから30年経ち、そして、これから先も、この営みをさらに育てて参ります。