2017年12月31日

年ノ瀬ヲ迎ヘテ・・・


年ノ瀬ヲ迎ヘテ・・・。 
 
ほとばしる 川の流れの 神の声
岸辺を洗ひ 我れここに立つ

 
 
 
青ク晴レ渡ル大空ノ下、聳エル富士山ヲ新幹線ノ車中カラ望ム。
 
いくたびも ゆきて過ぎしか その御前(みまへ)
天(そら)みつ神の こころはるけし

 
 
諏訪耕志

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2017年12月23日

天長節ヲオ祝ヒシテ


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天長節ヲオ祝ヒシテ
 
たたなづく 青垣山の あなたより
いやさかのぼる 光はるけく
 
我が内に 宿りし光 
いづこより 来たれるものか 吾(あ)は知りぬる


諏訪耕志

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2017年09月18日

前川佐美雄『植物祭』より


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昨夜の窓に叩きつける雨がすつかり上がつて、今日は美しい一日だつた。
 
そして、ひとつの仕事が終わり、大きなため息をひとつ〜。
 
一冊の歌集にまた救はれる。
 
 かなしみはつひに遠くにひとすぢの
     水をながしてうすれて行けり
 
 野の家にすこしはなれて佇(た)ちをれば
     風吹き来(きた)るあをき空より

 
          前川佐美雄『植物祭』より

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2017年09月05日

君待つと わが恋ひをれば 

 
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君待つと わが恋ひをれば 
わが屋戸の すだれ動かし 秋の風吹く  額田王

  
この萬葉の歌を声に出してみる。
 
さうすると、「君待つと わが恋ひをれば」までの響きには、「君」を待つどこか張りつめたやうな激しい想ひの漲りが感じられる。(この「君」とは、天智天皇であられる)
 
その、希みではち切れるやうな、静止のありやうが、吐き切られる息の中で満々と感じられる。
 
しかし、次の「わが屋戸の」でその静かさが崩れ、「すだれ動かし」で女のこころを揺さぶるやうな動きへと移つてゆく。
 
最後に、「秋の風吹く」が響き終わつた後、「もののあはれ」とはかういふものかといふ感覚に包まれる。
 
 
 
川端康成は、戦時中、『源氏物語』を耽読して、そこに平安王朝の雅の男女の、こころの図が描かれ続けてゐるのを、「明るさ」と見た、と日記に記してゐる。
 
非常時の興奮ではなく、平常心の極みがもたらす明るさを見た。
 
わたしも、この非常時に、人のこころの記録である『萬葉集』を常より深く味わつてゐる。


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2017年07月30日

川の字憩ふ


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子どもたちに、何を伝へられるだらう。 
 
それは、わたしたち大人が持つ理想や主義・主張よりも、むしろ、板についた振る舞ひやことば遣い、何気ない表情、そして喜びを感じ、その喜びに生きる姿・・・、つまり普段のなにげない家族のありやう、子どもたちはそんなものを深く、とても印象深く、受け取る。 
 
蝉の声 目覚めし朝は 親と子と 川の字憩ふ むかしもいまも
 
諏訪耕志

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2017年07月01日

月ニジミテモ


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梓弓 引けよはじけよ 音高く 夜空の月は にじみ揺らげど

玉磨き つるぎ研ぎつつ 慎みて 恃むおのれぞ まことの祓ひ


諏訪耕志

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2017年06月21日

小夜更けて


隣の部屋で妻と娘二人がすうすう寝息を立てとる夜更けに、一人で酒を飲みながら思ふ。
 
静かやなあ。ええ夜やなあ。
 
なんやかんやゆうたかて、日本はええ国や。
 
そらあ、猥雑なところや、わやくちゃなところもあるかもしれんけど、風土や人情にすがすがしいところがある。懐かしいところがある。美しいところがある。
 
かういふ風土や人情いふのは、国あつてのことやけどなあ。国が潰れたり、他の国に乗つ取られたりしたら、昔から続いてゐるかういふ静けさも懐かしさも吹き飛んでしまふで。さう思ふんやけどなあ。
 
 
小夜更けて 水流れをり 静かにも 耳澄ましつつ さかずき挙げむ

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2017年06月09日

あをき空


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あをき空 涙流るる あをき空 いや澄みわたれ そらみつ想ひ
諏訪耕志

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2017年05月22日

タチドマリ 初メテ見エシ


たちどまり はじめて見えし ゆらぐ世に こころもゆらぐ うるはしこの世
 
人はそも 立ち止まらずば 見えぬかも 風にたなびく 神のかなしみ


諏訪耕志

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2017年04月25日

春の夕べ


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わたしたちの暮らしてゐる町には竜神様が祀られてゐる万代池といふ池があり、そこで、わたしは幼い頃からずつと遊んできた。ここは、いつも、清浄な空気を湛えてゐるやうな気がして、思ひが屈するときなどは、必ずここへ足を運び、木の下に何時間も座つたり、がむしゃらに走つたりした。父親ともここでよく一緒に時を過ごした。今日は、その父親が身罷つてから丁度十年目の日だつた。様々な想ひ出がある。ここは、いつも美しい。春の夕べ。親父は、どうしてるだらう。

春十年(ととせ) とほくに仰ぐ 祖(おや)の影
その影いまだ 我を包めり

春十年(ととせ) とほくに仰ぐ 祖(おや)の影
年ゆくごとに 澄みわたるかも
 

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2017年03月30日

旧暦三月三日ノヒナマツリ


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春休みで家族全員揃ふ今日、一日早いけれども、「ことばの家」の旧暦三月三日のひなまつり。氏神様の生根神社にお参りしました。
 
春萌えて こころに匂ふ 桃の花 百とせ越へて 色あせるなゆめ
諏訪耕志



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2017年03月20日

春、花、蜂・・・


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はるかぜの はこぶはなびら かぐはしき
ほほゑみふふみ みずにうかびて


花は夢 色も調べも 流れゆく 
見れど飽かぬも 聴けど飽かぬも



諏訪耕志



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小町藤 ゆれしふさぶさ なにならむ
こころ目覚めし 春の訪れ

 

みつばちの 羽音さやぎて あふれでる
いのち嬉しや 小町藤波

 

諏訪耕志 

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2017年03月13日

龍ノマナコ


龍ノ形シタ雲ニ、
満月ノ光ガ、
丁度マナコノヤウニ輝クヲミル。
 
もちづきの まなこ光りて 駆けりゆく
如月一夜(きさらぎひとよ) 我も駆けらむ

 
諏訪耕志

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2017年02月28日

旧暦二月 三日月ノ夜二呟キヌ


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透きとほる 夜空のはてに 眉引きの 三日月みれば 君し念ほゆ
諏訪耕志                                  


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2017年02月08日

酒、キザハシナリ


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酒酌みて ひとり想ひは まろみたり あの世のちぎり ここにてなせりと
 
酒に酔ひ うつつか夢か にじみゆく すがたも面(おも)も 天(あめ)の写し絵
 
諏訪耕志

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2017年02月03日

身ニ染ミ入ル閑サヤ


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橿原の 杜の奥処(おくか)の 閑さや 凝りほどけし 神のまにまに 
諏訪耕志

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2017年01月20日

籠モリテ語ラハム


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冬一日(ひとひ) 風吹き荒れて 我ひとり 
籠もりて語らはむ 古人(いにしへびと)と

諏訪耕志

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2017年01月16日

雪ノ京都ニテ


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京都下鴨神社ノ摂社「河合神社」ニ詣デテ、
ソコニ祀ラレル玉依姫命ヲ訪ネユク。
下鴨に斎(いつ)き鎮まる常乙女(とこをとめ)ほほゑみわたれる白雪の花
諏訪耕志
 
 


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河合神社ヲ出デルヤイナヤ、陽ノ光差ス。
天(あま)照らす光は何のしるしやと斑雪(はだれ)の空に問ひかけし君
諏訪耕志

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2017年01月06日

天橋立ニ歸リテ


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伊邪那美(いざなみ)の 恕(ゆる)せし調べ 水面(みなも)にも
春の初めの 天橋立

諏訪耕志

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2017年01月02日

初春の歌


我ガ氏神様ノ生根神社、ソシテ大海神社ニ初詣ニ訪レテ。
初春の 神のやしろに つどひくる 民よ 我らよ 神代し念ほゆ
諏訪耕志
 

昨年の暮れ、フエイスブツクの「和歌の會」といふ、
やまとうたを愛する人たちが集ふ、
インターネット上のコミュニティーに参加させてもらえたことが、
わたしにとつては、永年憧れだけが募つてゐた歌づくりの道を歩みだす第一歩になつたのでした。
 
そこでは、気張ることなく、しかし、互ひに気遣ひを忍ばせながら、
歌のやりとりがなされてゐて、
まるつきり初心者のわたしでさへもが、
こころ安んじて厚かましく歌を投稿させてもらつてゐます。

歌、とりわけ、和歌(やまとうた)は、
まごころだけが載る、
不思議な文藝です。

和歌こそが日本の文學のおほもとであることを、
この歳になつてからだで感じることができたのでした。
 
「和歌の會」にいざなつてくださつた方、そして會の皆様に、
こころからの感謝を感じてゐるのです。

日本の歌と歌とが出逢う素晴らしい會へと、
「和歌の會」がいつさうなりゆきますやうに。 
 
日本語の奇しきさきはひを慈しむわたしたち。

皆様にとり今年も素晴らしい年になりますやうに。

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