
ラフカディオ・ハーンの『日本の面影』をゆっくりと読みました。
島根の松江で英語の教師として赴任した時、彼の採用を面倒した県知事の籠手田 安定(こてだ やすさだ)を県庁に訪ねた時の文章です。
⚫️知事は立ち上がって私を迎えると、巨人のような温かい握手をしてくれた。彼の目をのぞきこむと、私はこの人を死ぬまで愛するような気持ちになった。少年のように曇りのない率直な顔立ちには、もの静かな力と寛大な心が表れている。仏様のような穏やかさである。この知事のそばにいると、他のお役人たちはとても小さく見えた。実際、知事が与える第一印象は、この人は人種が違うと思わせるほどだった。昔の日本の英雄たちは、こういう素質を持った人物だったのではないか、と私が内心思っていると、知事が私に椅子に掛けるよう指示した。それから、私の案内役に低い声で何か尋ねている。流暢で深みのあるその声音には、顔から受けた印象をさらに強めるような、心嬉しくなるような魅力があった。
憧れの地、日本にたどり着いたハーンの溢れ出るようなこころのういういしさが、見るもの、聴くもの、出逢うものに響きあって、歌うように、絵筆で描くように、ことばを綴っています。
ここに描かれている日本の風景、日本の社会、そして、日本人。
130年前のヨーロッパですでに失われてしまっていたものを、ハーンは日本に見いだせた喜びを語っているのですが、わたしたち日本人もまたそれを失ってしまったのだと、今、はっきりと自覚できるのです。
しかし、だからこそ、わたしたちは、ひとりひとり、自分自身から、何かを取り戻し、何かを新しく生み出してゆくことができる。
そう、念っています。
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