2024年12月30日

前田英樹氏の謦咳に接する 〜響き続けてゐるひとつの調べ〜



IMG_2437.jpg



今年を想い返して、最も嬉しかつたことのひとつが、夏の終わり、池袋の飲み屋で、我が敬愛の方である文芸・映像批評家の前田英樹氏と杯を酌み交はさせていただいたことである。


昨年上梓された『保田與重郎の文学』にあまりにも感動したがゆゑに、ブログに拙い感想を書き記したところ、なんとそれを読んで下さり、いくたびかメールの交換をさせていただいたあと、わざわざ盃の席を設けて下さつたのだつた。


わたしは、この二十年近く、彼の著作のおほよそすべてを愛読して来てゐて、こんなもつたいないことはないと、ひたすらに念じつつ、こんな楽しいことはないといふ時間を味ははせていただいた。


それは、前田氏が本当に気を使つて下さり、わたしのやうな素人にも分かるやうにいろいろと丁寧にお話をして下さつたからだらうと思ふ。


様々なお話をして下さり、すべてが夢の中での想ひ出のやうになつてしまつてゐるのだが、保田與重郎が亡くなつたときの小林秀雄のこと、そして、その日本の文学にこころといのちを捧げ続けたふたりの批評家のこころざしに、いま、繋がるやうな前田氏ご自身の矜持を本当に控えめに、しかし、真実の籠る眼差しでわたしに語つて下さつた語気と精神が、わたしの胸にずつと響き続けてゐる。そして、それはこれから先もずつと響き続けてゆくだらう。


それは、わたし自身がわたし自身として生きてゆくための、ひとつの調べ・トーンなのだ。


こんな幸せなことはない。


こんなありがたい生の時間はない。


本当にかけがへのない時間であつた。







posted by koji at 22:30 | 大阪 ☁ | Comment(0) | 断想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
■ 新着記事
こころのこよみ(第45週) (02/15)
人は心臓で考えることができるようになる! (02/12)
こころのこよみ(第44週) (02/08)
『コミュニケーショントレーニングネットワーク岸英光さんとのトークライブ』 ひのみやこ 日本文化に根ざすシュタイナー教員養成講座 @宮城蔵王 清水絢子 高橋愛満 諏訪耕志 (02/06)
教師に必要なものは無言のうちのこころもち (02/02)
こころのこよみ(第43週) (02/02)
胸に炎を灯し続けるために シュタイナー「血のエーテル化」より (01/31)
こころのこよみ(第42週) (01/25)
アドリブでお話を語ってみる (01/19)
こころのこよみ(第41週) (01/18)
■ カテゴリ
クリックすると一覧が表示されます。
ことばづくり(言語造形)(243)
アントロポゾフィー(180)
断想(569)
講座・公演・祝祭の情報ならびにご報告(452)
こころのこよみ(魂の暦)(489)
動画(323)
農のいとなみ(1)
うたの學び(88)
神の社を訪ねて(37)
アントロポゾフィーハウス(92)
声の贈りもの(5)
読書ノート(71)
絵・彫刻・美術・映画・音楽・演劇・写真(41)
ことばと子どもの育ち(13)
「ことよさしの会」〜言語造形に取り組む仲間たち〜(11)
■ 最近のコメント
待ち望まれてゐることばの靈(ひ)〜「こころのこよみ」オンラインクラスのご案内〜 by 諏訪耕志 (04/03)
こころのこよみ(第1週) 〜甦りの祭り(復活祭)の調べ〜 by (04/09)
12/10(土・夜)12/11(日・朝)オンライン講座「星の銀貨」を通して〜人への無理解と憎しみについて〜 by アントロポゾフィーハウス (12/07)
穏やかで安らかなこころを持ち続けること、しかし、目覚めること by 諏訪耕志 (04/23)
教育の根本 by 諏訪耕志 (06/21)
■ 記事検索
 
RDF Site Summary
RSS 2.0