エル・グレコ『聖霊降臨』
今日といふ日は、聖き靈(ひ)の降り給ふ祭り(聖霊降臨祭)の日です。
新約聖書の中にある『使徒行伝』によると、十字架刑のあと、キリストが甦りし後の五十日後に、ひとところに集まつて一心に祈りを捧げてゐたひとりひとりの弟子の頭の上に、炎の舌のすがたをもつて聖き靈が降り給ひ、その靈に満たされたひとりひとりが、キリストのことばを国々のことば(己れのことば)で語り出したのでした。
炎。聖き靈。ことば。
ひとりひとりが、借り物でない己れのことばで、生きることの理想を熱(炎)をもつて語る。キリストのこころざしを語る。
それは、その人を自由へと導きます。その人をその人にします。
ひとりの自由なる人の祭り。聖き靈の降り給ふ祭り。今日からその日が始まるのです。
日本においては、旧暦における五月五日の端午(菖蒲)の節句を祝ふことと軌を一にしてゐます(新暦では毎年、旧暦五月五日にあたる日が変はります)。
菖蒲の葉がりんと天に向かって立つこと、そして鯉のぼりの幡が空に向かってまっすぐに立つこと。
それは、そもそも、すべての子どもの健やかな成長を願ひ、いつの日か自分自身の足でまつすぐに立つその子に、聖き靈が降り給ふやうにと願ふ親たちの祈りの表れです。
それゆゑ、旧暦五月五日の節句をわたしたちは聖き靈の降り給ふ祭りとして祝ふことができます。
わたしたちは、全く新しい意識で、旧暦の五月五日の節句(新暦では今年は六月十日)に向けて、聖き靈(ひ)の降り給ふ祭り(聖霊降臨祭)として、この三週間余りの間、ひとりの自由なる人の祭りを静かに祝ふことができます。
【アントロポゾフィーの最新記事】
- 理想をことばに鋳直すお祭り ミカエルのお..
- エーテルの世を描いている古事記
- 我がこころのこよみ
- 「分かる」の深まり
- ヨハネの祭り 夏、地を踏みつつ天へと羽ば..
- 夏至考
- 幼な子の夢見る意識を守ること
- メディテーションのことばと言語造形
- 音楽家ツェルターに宛てた手紙から ゲーテ..
- 『神秘劇』(シュタイナー作)より
- 教員養成講座 受講生のことば
- アントロポゾフィーを分かち合う場
- アントロポゾフィーという練習の道
- ことばが甦るとき
- 破壊のかまど
- 冬、それは見えないものを考える季節
- 本を通して自由になるといふこと
- クリスマス・新嘗祭への備え 〜いのちの営..
- むすんでひらいて
- ヨハネの祭り 夏、地を踏みつつ天へと羽ば..