冠木 友紀子さんの通訳藝術道場に集まられた方々と言語造形を通して、昨日、東京西日暮里にて英詩と和歌をからだとこころまるごとで味わう時間を持つことができました。
イギリスの18世紀から19世紀にかけて生きたWilliam Wordsworthの、まことに慎ましい趣きの一片の詩「Written In The Album Of A Child」。
その豊かな深い精神が、冠木さんの導きによって顕わになるのです。
冠木さんは、まずは、その詩を朗唱され、その響きにわたしたちは耳を澄ませます。
その上で、ことばのひとつひとつに光と影と動きが宿っているということを、英語という言語の内部へと踏み入りながら、冠木さんは語られるのでした。
それはまた、ことばのリズム、強弱、長短、また音韻のもつ形がその詩の持つ精神を表現してはいないかという、問いかけでもあるのでした。
その問いに応えるように、わたしたちは、言語造形を通して、ことばひとつひとつに沿ってからだを用いながら、その詩を声に出してみるのでした。
そのとき、その詩のもつ表情、雰囲気、しぐさ、感情、願い、それらの言うに言われぬ何かがわたしたちの周りに立ち上がって来るのです。
そして、天空と大地の間に立っているわたしたち人というものの営みがいかにモラーリッシュでありうるかということ。
からだとこころと精神の共同作業である言語造形によって、その詩に潜んでいる真の道徳性がありありと感じられるのでした。
そして、次に、萬葉集の巻頭第一首目の雄略天皇による御製歌(おほみうた)に全身全霊で取り組んでいただいたのでした。
神ながらの精神から詠われている萬葉集の歌をわたしたちは、緩やかに、かつ、伸びやかに腕を振り、息を解き放ち、歩いて行きながら、腹の底から、母音の「O」の響きを通奏低音として、虚空へとことばを響き渡らせます。
この巻頭第一首目の長歌(ながうた)のもつ、音韻の運びやリズム、形や動きによって、ことばの意味以上に如実に実感させられるもの、それは、日本という「くに(近代的な意味での国家ではない)」が、そもそもどういう「くに」であるのか、という、民族の精神に関わることでした。
そこには、まことに優しく、愛と雄心(をごころ)に満ちた、こころもちと、くにがらが、湛えられているのでした。
朝から夕方までかけて、わたしたちは、英詩と和歌を通し、ことばというもの、そのものが持つ願いを感じるまでに語らいは至りました。
ことばとはわたしたち人が使うものである、という通念を正すこと。
ことばとは、わたしたち人が仕えるべきものである。
なぜなら、そうすることによって、ことばがそもそも湛えている高く深い精神が、わたしたち人を、物質性を超えた、より高い世へと導くからです。
ことばを大切にする民族は守られます。国語を大事に育てゆくことこそが、最も根底のくにの護りなのです。そして、それこそが、平和の礎となります。必ずです。それは、萬葉集の編纂者、大伴家持の悲願、こころざしでもありました。
洋の東西を問わず、詩人たちは、古来、俗語を正す(松尾芭蕉)という使命に貫かれた人でした。
詩を、文学を、ことばの芸術を、身でもって味わい、その言霊に沿うような生き方へと歩いてゆくこと。それは、人をまことの道徳性へと導きます。
そのために、言語造形という芸術が、ルードルフ・シュタイナーを通して、この世に生まれたのです。
こういった機会を設えて下さった、通訳藝術道場主催の冠木さん、そしてお集まりくださった皆様、こころよりお礼を申し上げます。
これからも、「言霊の幸(さきは)ふ国」、国民総詩人化(!)に向けて、働いて行きたいと思います。
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