2023年11月05日

ひとりの人に降りて来た神の意志 〜令和五年度 土舞台顕彰会 前田英樹氏講演「保田與重郎」〜



IMG_1435.jpg

IMG_1434.jpg



奈良の桜井といふ場。


そこがどのやうな意味を持つ場であるか。


神々の神々しい足跡、先人の尊い足跡が、深く大地の底に鎮められているだけでなく、山や川の様相に今も残っている場、それが桜井であること。


そのことを親しみをもつて、かつ明らかに語つたのは、この桜井出身の昭和の文人、保田與重郎でありました。


この春、『保田與重郎の文学』を上梓された前田英樹氏は、この日の講演を次のやうなことばから切り出されました。


「保田與重郎こそは、その身に神が降りて来られ、神の意志のままに語り、動き、生きざるを得なかつた、歴史にまれに現れるひとりの文人である」と。


100年少し前の桜井といふ地にそのやうな人が出現したといふことも、奇(くす)しくも驚くべきことではないかと、前田氏は桜井市民に向かつて、真つ向から語るのでした。


この桜井といふ地で保田與重郎が一身を賭けて説かうとした、たいせつな精神を知りゆき、引き継ぎゆき、繰り出しゆく必要が令和のこの時代にどうしてもある。


19世紀後半、ドイツのヴァイマールに設立されたゲーテ・シラー文庫において、近代化に抗するまことのドイツ精神を守らうとしたルードルフ・シュタイナーをはじめとする人々の仕事のやうに、まことの日本精神を学び、守り、伝へゆき、さらには、芸術的、教育的な発展を生み出してゆくためのセンターを桜井に創ること。


その仕事をわたしは担ふのだといふ、念ひ。


前田氏のことばを聴きつつ、わたしはそのことを考へてゐたのでした。


また、前田氏によつて、保田の親しみに満ちた趣深いことばが紹介されました。


それは、日本といふ国を支へてゐるたいせつな何かを知り、その上で現代に生きてゐるわたしたちが何をなしてゆくことができるか。そのことについて、「相談を人々にもちかけたい」といふことばです。


相談を互いにもちかけあひ、談らひあふ。


そこからこそ、ひとり、また、ひとりの人のこころの深い内側に火(靈)が灯る。


こころの内に灯る靈(ひ)・精神の働きこそ、ひとりひとりの自主独立を求めるものはありません。


さうして、初めて、人と人とがまことの意味で力を合はせて働くことができる。


前田氏、そして桜井の土舞台顕彰会の方ともお話を交はすことができ、そんな想ひをさらに暖めることができた、わたしにとつては、かけがへのない一日で、また、桜井の保田與重郎の生家の前に立ち寄り、礼をして、大阪に帰つて来たのでした。


IMG_1432.jpg







posted by koji at 21:15 | 大阪 ☁ | Comment(0) | 断想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
■ 新着記事
滋賀シュタイナー ちいさいおうち園での語らい (04/27)
アントロポゾフィー 人であることの意識 (04/24)
三羽の揚羽蝶 (04/24)
ひとりひとりの歩幅 (04/23)
京都市伏見区醍醐勝口町でのことばの家 ことばづくり(言語造形)クラスのご案内 (04/23)
ことばが甦るとき 〜甦りの祭り(復活祭)の日にちなんで〜 (04/20)
こころのこよみ(第1週) 〜甦りの祭り(復活祭)の調べ〜 (04/20)
鏡像 (04/18)
4/20(日)復活祭からの「こころのこよみ」オンラインクラス (04/14)
学んだことは忘れていい (04/13)
■ カテゴリ
クリックすると一覧が表示されます。
ことばづくり(言語造形)(244)
アントロポゾフィー(182)
断想(575)
講座・公演・祝祭の情報ならびにご報告(460)
こころのこよみ(魂の暦)(497)
動画(333)
農のいとなみ(1)
うたの學び(88)
神の社を訪ねて(37)
アントロポゾフィーハウス(92)
声の贈りもの(5)
読書ノート(71)
絵・彫刻・美術・映画・音楽・演劇・写真(41)
ことばと子どもの育ち(13)
「ことよさしの会」〜言語造形に取り組む仲間たち〜(11)
■ 最近のコメント
5/7(水)からのシュタイナー著「いかにして人が高い世を知るにいたるか」毎週水曜日夜オンラインクラスへのご案内 by 諏訪耕志 (04/11)
待ち望まれてゐることばの靈(ひ)〜「こころのこよみ」オンラインクラスのご案内〜 by 諏訪耕志 (04/03)
こころのこよみ(第1週) 〜甦りの祭り(復活祭)の調べ〜 by (04/09)
12/10(土・夜)12/11(日・朝)オンライン講座「星の銀貨」を通して〜人への無理解と憎しみについて〜 by アントロポゾフィーハウス (12/07)
穏やかで安らかなこころを持ち続けること、しかし、目覚めること by 諏訪耕志 (04/23)
■ 記事検索
 
RDF Site Summary
RSS 2.0