2023年09月28日

草薙劍(くさなぎのつるぎ)


安田靫彦「草薙剣」.jpg
安田靫彦「草薙剣」



秋、それは意識の目覺めが訪れていいときです。


夏の暑さ、光、色彩の輝き、さういつたものが鎭まつてゆき、風の音に、蟲の音に、靜かさに、耳を澄ますことのできる季節の到來です。


その靜かさこそが、内なる〈わたし〉の目覺めへと導いてくれます。


秋、それは宇宙から鉄が地球へと、人のからだの内へと、降り注ぐ季節であることを、シュタイナーは語つてゐます。


からだの内を流れる血に鉄が注ぎ込まれる季節、秋。


その鉄は、わたしたちに、みづからに目覺める力、こころを決める力、意志の強さを與へようとしてゐます。


我が國の神話では、建速須佐之男命(たけはやすさのをのみこと)が八岐大蛇(やまたのをろち)といふ大蛇を成敗した後、その大蛇の尾から取り出したのが、草薙劍(くさなぎのつるぎ)だと語られてゐます。


その劍は、人をあやめるためのものではなく、草を薙ぐためのもの。


こころに生ひ茂る、弱氣、怠惰、虚僞、執念、情欲など、樣々な邪念や惡しき想念、不健康な情を一刀のもとに斷ち切つて、こころの草原を見晴らしの良いものにし、一筋の歩みゆく道を見いださせてくれるもの、それが、すべての人のこころに鎭まつてゐる「草薙劍」です。


それは、ひとりひとりの人が、みづから手に握ろうとすればこそ、その働きをなす、精神からの鉄の劍です。


自分自身のこころに精神の鉄の劍、草薙劍をもち、自分自身が歩いて行く道を見いだし、そして、一歩一歩、自分の歩幅で歩き始める、そんな秋(とき)が訪れてゐます。


わたしたちすべての人に、その劍は與へられてあります。






posted by koji at 21:46 | 大阪 ☁ | Comment(0) | 断想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
■ 新着記事
滋賀シュタイナー ちいさいおうち園での語らい (04/27)
アントロポゾフィー 人であることの意識 (04/24)
三羽の揚羽蝶 (04/24)
ひとりひとりの歩幅 (04/23)
京都市伏見区醍醐勝口町でのことばの家 ことばづくり(言語造形)クラスのご案内 (04/23)
ことばが甦るとき 〜甦りの祭り(復活祭)の日にちなんで〜 (04/20)
こころのこよみ(第1週) 〜甦りの祭り(復活祭)の調べ〜 (04/20)
鏡像 (04/18)
4/20(日)復活祭からの「こころのこよみ」オンラインクラス (04/14)
学んだことは忘れていい (04/13)
■ カテゴリ
クリックすると一覧が表示されます。
ことばづくり(言語造形)(244)
アントロポゾフィー(182)
断想(575)
講座・公演・祝祭の情報ならびにご報告(460)
こころのこよみ(魂の暦)(497)
動画(333)
農のいとなみ(1)
うたの學び(88)
神の社を訪ねて(37)
アントロポゾフィーハウス(92)
声の贈りもの(5)
読書ノート(71)
絵・彫刻・美術・映画・音楽・演劇・写真(41)
ことばと子どもの育ち(13)
「ことよさしの会」〜言語造形に取り組む仲間たち〜(11)
■ 最近のコメント
5/7(水)からのシュタイナー著「いかにして人が高い世を知るにいたるか」毎週水曜日夜オンラインクラスへのご案内 by 諏訪耕志 (04/11)
待ち望まれてゐることばの靈(ひ)〜「こころのこよみ」オンラインクラスのご案内〜 by 諏訪耕志 (04/03)
こころのこよみ(第1週) 〜甦りの祭り(復活祭)の調べ〜 by (04/09)
12/10(土・夜)12/11(日・朝)オンライン講座「星の銀貨」を通して〜人への無理解と憎しみについて〜 by アントロポゾフィーハウス (12/07)
穏やかで安らかなこころを持ち続けること、しかし、目覚めること by 諏訪耕志 (04/23)
■ 記事検索
 
RDF Site Summary
RSS 2.0