近江の荒れたる都を過ゆく時、柿本朝臣人麿がよめる歌
0029 玉たすき 畝傍の山の 橿原の ひしりの御代よ
生れましし 神のことごと 樛の木の いや継ぎ嗣ぎに
天の下 知ろしめししを そらみつ 大和を置きて
青丹よし 奈良山越えて いかさまに 思ほしけめか
天離る 夷にはあらねど 石走る 淡海の国の
楽浪の 大津の宮に 天の下 知ろしめしけむ
天皇の 神の命の 大宮は ここと聞けども
大殿は ここと言へども 霞立つ 春日か霧れる
夏草か 繁くなりぬる ももしきの 大宮処 見れば悲しも
反し歌
0030 楽浪の志賀の辛崎幸くあれど大宮人ひとの船待ちかねつ
0031 楽浪の志賀の大曲淀むとも昔の人にまたも逢はめやも
我が国最古の和歌集『萬葉集』。
言語造形による朗唱でお聴きいただきます。
ことばのひとつひとつの意味よりも、響きのリズムと母音の広がり、子音のかたどり、それらの音楽的要素・彫塑的要素を感じてみませう。
共に味はつていただくことができればなによりです。
なぜ、『萬葉集』といふものが、この世に生まれたのか。
それは、当時の日本が危機に直面してゐたからです。
我が国の先祖伝来の精神文化が、隣の大国・唐からの最新の文化・文明に、駆逐されさうになつてゐたからです。
ご先祖様から受け継いできたものの考へ方、暮らしの立て方、人生の送り方、そして、何よりも、古くからのことば遣ひ、それらが失はれさうになつてゐたからです。
明治の文明開化の約一千年前にも、同じやうな深刻な矛盾を、我が国は抱えざるをえなかつたのです。
『萬葉集』は、古くからのことばに対する信仰、ことばに対するたいせつな感覚を保持し、未来永劫の日本民族に、そのことばの美、言霊の力、言語芸術を、なんとか残さうとして、大伴家持によつて編まれたものです。ことばの伝統は精神の伝統であり、それを守り、育むことで、民族はその精神文化を保持することができるのです。
この『萬葉集』が編まれたことによつて、その後も辛くも、日本は日本であり続けることができたのだ、さうわたしは確信してゐます。
You Tube ライブラリー「われらが萬葉集」
言語造形(Sprachgestaltung)とは、ルドルフ・シュタイナーのアントロポゾフィーから生まれた、ことばの芸術です。ことばを話すことが、そもそも芸術行為なのだといふことを、シュタイナーは、人に想ひ起こさせようとしたのです。
わたしたち「ことばの家 諏訪」は、大阪の住吉にて、その言語造形を学ぶ場を設けてゐます。
「ことばの家 諏訪 言語造形のためのアトリエ」
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