藤原の宮に天の下しろしめしし天皇とは、第41代持統天皇です。
天の香具山は、夫君であられた先の第40代天皇、天武天皇が、信仰と愛しみを捧げた聖地でありました。
夫君がお亡くなりになり、その大君の喪が明け、臣たちはじめ臣下の者たちがこの国の精神の拠り所である祭祀を行ふべく、衣を白く洗ひ、浄めて、新しい御代のはじまりを迎えようとしている様が持統天皇の眼前、遥か向かうに見えます。
たなびく白。
そして、その清き輝きを見守るかの如く、天の香具山が後ろにしづかに佇んでゐます。
新しきすめらみこと、持統天皇のまごころが、この御製歌に見事に奏でられてゐます。
藤原の宮に天の下しろしめしし天皇の代
天皇のみよみませる御製歌
春過ぎて夏来るらし白布の衣乾したり天の香具山
(萬葉集28)
我が国最古の和歌集『萬葉集』。
言語造形による朗唱でお聴きいただきます。
ことばのひとつひとつの意味よりも、響きのリズムと母音の広がり、子音のかたどり、それらの音楽的要素・彫塑的要素を感じてみませう。
共に味はつていただくことができればなによりです。
なぜ、『萬葉集』といふものが、この世に生まれたのか。
それは、当時の日本が危機に直面してゐたからです。
我が国の先祖伝来の精神文化が、隣の大国・唐からの最新の文化・文明に、駆逐されさうになつてゐたからです。
ご先祖様から受け継いできたものの考へ方、暮らしの立て方、人生の送り方、そして、何よりも、古くからのことば遣ひ、それらが失はれさうになつてゐたからです。
明治の文明開化の約一千年前にも、同じやうな深刻な矛盾を、我が国は抱えざるをえなかつたのです。
『萬葉集』は、古くからのことばに対する信仰、ことばに対するたいせつな感覚を保持し、未来永劫の日本民族に、そのことばの美、言霊の力、言語芸術を、なんとか残さうとして、大伴家持によつて編まれたものです。ことばの伝統は精神の伝統であり、それを守り、育むことで、民族はその精神文化を保持することができるのです。
この『萬葉集』が編まれたことによつて、その後も辛くも、日本は日本であり続けることができたのだ、さうわたしは確信してゐます。
You Tube ライブラリー「われらが萬葉集」
言語造形(Sprachgestaltung)とは、ルドルフ・シュタイナーのアントロポゾフィーから生まれた、ことばの芸術です。ことばを話すことが、そもそも芸術行為なのだといふことを、シュタイナーは、人に想ひ起こさせようとしたのです。
わたしたち「ことばの家 諏訪」は、大阪の住吉にて、その言語造形を学ぶ場を設けてゐます。
「ことばの家 諏訪 言語造形のためのアトリエ」
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