鎌倉の妙本寺境内にある「萬葉集研究遺跡」の石碑
鎌倉時代、隣国の元からの軍事的襲来の間際、鎌倉の地において、仙覚(せんがく)といふ僧侶は、萬葉集の注釈を施してゐた。
そして、同じころ、日蓮は、法華改宗を宣伝し、来たる国難を叫んでゐた。
このふたりは、ともに、この国を根底から守らうとした人である。
前者の仙覚は、漢字ばかりの萬葉仮名で書かれてゐる萬葉集の和歌を後代の日本人に親しく傳へてゆくために、古い日本語の調べ(訓み方)をなんとか汲み上げる仕事をなしとげた人。
国語を守つた人である。
国のことばを守るといふことがどれほど大切なことか、たいていの人は気づいてゐない。
元といふ大国が日本に侵略して来ようとしてゐる、そのとき、防人たちが日本中から九州北部に集結し、実際に闘い抜いてくれた。
しかし、国語や日本人のこころを守るといふ精神の仕事を仙覚や日蓮は担ったのだ。
この、国を支える根底の仕事である、こころとことばを守り、育てゆくこと。
これこそが、教育の一番の基である。
そして、国防の最も基となるものである。
一国一国が自主独立できてゐるとき、そこに住む人たち、ひとりひとりは、自由を、自主独立を生きることができる。
国難に先駆けて、平時の時から、このことを意識して教育を作り上げてゐることが、わたしには大切なことのやうに思へてならない。
先代の方々の仕事の内、かういつた精神の仕事は、見逃されやすいことではないだらうか。
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