今、この時代に大人が子どもたちにできることとは、何だろうと、考えています。
このときにあって、わたしたち大人がいま、子どもたちのために、もっとも意識して創り上げていくべきもの。
それは、人と人との間の信頼、そしてそこからこそ生まれる「つながり」だということに、今更ながらなのですが、何度でも繰り返して思い至るのです。
この現代の社会的混乱は、わたしたちにいま一度、人と人との間の信頼というものを取り戻せ、そして、大人たちよ、そのために、いま一度、目覚めよ、というメッセージを送ってくれていると思われてなりません。
子どもは、大人たちの間の信頼関係をこそ土台にして、人として成長していくことができる、自分の<わたし>を育んでいくことができる。
もしかしたらこれから、子どもたちにとって、こころの上でも、からだの上でも、健やかに生きていくことが大変厳しい時代になろうとしているのなら、わたしたち大人は、なんとかして、子どもたちひとりひとりの個の成長、子どもたちの内側から発し、伸び、花開こうとする<わたし>の力を、邪魔しないようにしなければならない。
そうして子どもの中で育った<わたし>のみが、外の世からやってくる様々なものに太刀打ちできる。
これからの時代は、世の多くの人が言っていることに従うような人ではなく、ひとりひとりの内側からの<わたし>の力を持つ人のみが、困難な道を切り開いて、生きて行くことができる。
そのための具体的、かつ発展的な示唆が、シュタイナー教育によってなされているのですが、そのような教育上の示唆以上に、子どもの側にあるわたしたち大人のありようそのものが、これからはますます問われていくでしょう。
大人と大人の間の信頼関係を肌で感じることによって、そしてひとりひとりの大人の自己信頼から生まれる気概に接することによって、子どもは自分自身の〈わたし〉を育んでゆくことができる。
人と人との信頼からこそ生まれる「つながり」。
そして、こここそが、最も重きをなすことなのですが、その「人と人との間のつながり」の基は、ひとりひとりの人の内から発せられる自己信頼の光と力にある、ということなのです。
その光と力を己れのものにしていくためには、大人自身が、何よりもまず、みずからを律し、考えと情を整え、ことばと行いを一致させ、毎日を丁寧に生きて行くことがどうしても、要ります。
すべての人間関係の問題、社会問題の根底には、それらへの取り組みの如何が横たわっています。
そのことに真摯に取り組んでいくのに、アントロポゾフィーからのこころの練習の必要性が、ますます、感じられるのです。
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