昨日、大阪枚方市の關西醫科大學大ホールにて行はれたバッハの「マタイ受難曲」を次女とふたりで聽きに行きました。
以前、言語造形の公演でチェロを彈いて下さつた山口健さんがフェイスブックで紹介して下さつてゐた公演だつたのです。山口さん、ありがたうございます。本當に素晴らしい公演でした。
娘の誕生日が近いので、誕生日プレゼントのつもりで、當日朝、誘つてみましたら、「行く」と言つてついて來てくれました。
會場に着いてみますと、大ホールの一階はぎつしり滿員、おそらく二階も三階も聽きに來た人たちで一杯で、千人を超えるお客さんでした。
一曲目の合唱曲「來たれ娘たちよ、われと共に歎け」を聽いて、わたしは譯も分からないやうな情がいきなりこみ上げて來て、滂沱の涙です。
前半、後半、それぞれ一時間半、計三時間強の公演、何度、涙が溢れて來たことか・・・。
十字架に掛けられようとしてゐるイエスを弟子のペテロが三度否認し、自分はキリストと何のかかはりあひもないと云つて否定する箇所のあと、そのペテロが外へ出て行き、さめざめと泣いた、と云ふ短いけれども痛切極まりない旋律のことを、音樂評論家の吉田秀和氏が書いてゐました。
「ここを聽いて、胸をつかれないとしたら、その人は音樂を聽く必要のない人だ」と。
果たして、その場面における福音史家役の畑儀文氏の吐く息の中の震へるやうな小さな聲の響きたるや・・・。
終演後、客席からの拍手が鳴り止みませんでした。
歸りの電車の中で、娘は、キリストの意味、神と人との關係、人の罪、その他、樣々なことをわたしに訊いて來ました。
15歳の人にとつて、これからの生きて行く中で、今日の音樂が、どう響き續けるのか。
また、いつの日か、別の角度からでも、樣々なことを語り合へたらいいなと思ひます。
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