今週初めから、仙台にある「おひさまの丘 宮城シュタイナー学園」に来て、もうすぐ七年生を終えようとしている子どもたちと狂言のお稽古をしています。
言語造形を通しての狂言の作品作りなのです。
わたしが来るまでに、担任の福島玲子先生の導きの下、ほとんど完璧にせりふを憶えている子どもたちには、本当に感心しました。この子たちにとっては、記憶するということが、頭の作業というよりも、からだまるごとの営みだと、観ていて感じます。
舞台の上を幾何学におけるフォルムの上を正確に歩きつつ、日を追うごとに、腹の底から空間一杯に轟くような声を出し、ひとつひとつの所作も型に沿って作りなして来た子どもたちは、まるで、大地から樹液を吸い上げて大空高く聳え立つ樹木のようになって参りました。
思春期に入って来た子どもたちは、これまでの軽やかさ、透明さを湛えたありようから、重さに支配されるありようへと成長して来ますが、だからこそ、大地にしっかりと根付くような、我が足でしっかりと立つ力をこそ求めています。
狂言という舞台芸術は、そういう子どもたちにとって、何か、とてもよき作用を及ぼしているようです。
まだまだ寒い仙台ですが、稽古を終えた後の子どもたちは、汗をかき、ほっぺも紅潮しています。
また、これまで一度も生の狂言の舞台を観たことがないというこの子たちですが、だからこそ、舞台に立つということの直接的な体験をすることができているのではないか、そう感じています。
子どもたちが毎日このような芸術体験だけでなく、まさに芸術性に満ちた国語・算数・理科・社会の授業を積み重ねることができる、このシュタイナー学園、子どもたちだけでなく、大人にとっても、すべての人にとっても、本当に天からの恵みのような場所だということを、今回も、つくづく実感しています。
この学園を支えているすべての方々に、感謝と讃嘆です。
わたし自身、この一週間、学園の様々な方々と、学園のこと、共同体というもののこと、教員養成のこと、ひとりひとりのありかたなどについて深く親しく語り合えていることにも、得難いありがたさを感じています。
明日は、狂言への取り組みの最終日。子どもたちとことばの芸術を生きたいと思います。
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