16歳のときからの友人が、いま、亡くなつた。58歳だつた。わたしにとつては、たつたひとりの友人だつた。
昨日、ご自宅に見舞ひに行つたのだつた。8月の初めから立つこともできなくなり、昨日は意識も朦朧としてゐたのだけれど、わたしの顔が見えるかいと訊くと、「目が三つに見える」と笑つてくれた。そして、高校時代の思ひ出を語り合ふことができた。
「からだはかうして動かんようになつてしまふたけど、こころは動いとるやろ」と訊いたら、「めちゃ強う動いてる」と答へてくれた。
病院で、たつた独り隔離されてしまふことに比べて、自宅で家族に看取つてもらふことができた彼は、幸せだと思ふ。
しかし、自宅での看病で奥様は大変だつただらう。
高校時代に一緒に歌つた歌を病床でyou tubeを使つて彼に聴かせると、声を出して歌つてくれた。
いま、安らかに眠つた友よ。「君の欲しいものはなんですか。僕の欲しかったものはなんですか」
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