2022年08月08日

こころのこよみ(第18週) 〜新しい衣(ころも)〜



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藤島武二『蝶』



わたしはこころを拡げることができるのか、

受けとつた世のきざしのことばを

己れと結びつけつつ。

わたしは予感する、きつと力を見いだすことを。

こころをふさはしくかたちづくり、

精神の衣へと織りなすべく。   



Kann ich die Seele weiten,               
Das sie sich selbst verbindet
Empfangnem Welten-Keimesworte ?           
Ich ahne, das ich Kraft mus finden,           
Die Seele wurdig zu gestalten,              
Zum Geisteskleide sich zu bilden. 


 
前の週の『こよみ』において、世のことばが語りかけてきた。


「わたしの世のひろがりをもつて、あなたの精神の深みを満たしなさい」と。


夏の世の大いなるひろがり、それに沿ふことができたなら、それは沿ふ人に、これまでの生き方、考へ方、感じ方を越えるやうなものを、「贈りもの」として与へてくれる。


これを読んでくださつてゐる皆さんには、どのやうな「夏の贈りもの」が贈られただらうか。


その「贈り物」を受け入れる器。


その器が「こころ」であるならば、わたしはみづからにあらためてかう問ふことになる。


「わたしはこころを拡げることができるのか」


その問ひに応へていくことが、この夏から秋へと移つていく時期のテーマだと感じる。


新しい考へ、価値観、ライフスタイル、人生観、世界観、それらを「己れと結びつけつつ」。
 

しかし、その結びつけは、きつと、外からの結びつけではなく、内からおのづと生じてくる結びつきになる。
 

夏といふ季節を精神的に生きる。
 

それは、こころをこれまでよりも拡げることである。
 

「わたしは予感する、きつと力を見いだすことを」
 

それは、こころを拡げ、こころを、精神から織られた衣(ころも)にする力。
 

衣(ころも)とは、万葉の昔から、「恋衣」「旅衣」「染衣」のやうに、深く、活き活きと、しみじみと息づく、生活感情を言ふことばとしてよく使はれてゐたさうだ。(白川静『字訓』より)


「ころも」も「こころ」も、三つの o の母音から成り立つ、やまとことば。
 

それは、本来、精神から凝(こご)るものとしての動き、わたしたちのからだにまとふものとしての動きを、音韻として顕はにしてはゐないだらうか。
 

こころといふものが、精神といふわたしのわたしたるところ・わたしの芯〈わたしはある〉から、織りなされる。
 

そして、からだにまとふ衣となつて、身のこなし、振る舞ひのひとつひとつに顕はれる。しなやかに、柔らかく、輝きつつ。
 

そんな内なる力をきつと見いだす。
 

この夏から秋の初めにかけてのテーマであり、学び続けてゐる人への励ましでもあるだらう。



わたしはこころを拡げることができるのか、
受けとつた世のきざしのことばを
己れと結びつけつつ。
わたしは予感する、きつと力を見いだすことを。
こころをふさはしくかたちづくり、
精神の衣へと織りなすべく。



posted by koji at 13:54 | 大阪 | Comment(0) | こころのこよみ(魂の暦) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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