2021年10月08日

奥入瀬川沿ひにて



244422700_4424850204261658_6625958751650248441_n.jpg



あるところから駅まで歩いて行かうと、道を歩いてゐて、静かで大きな夜空の下、自分が今どこにゐるのか分からなくなり(スマホを持つてゐないわたし)、しばらくさまよひ歩いてゐました。


街灯も乏しいところを歩いてゐて、だんだんと、のんきなわたしもなぜだか不安になつて参ります。


そんなとき、「ああ、かうして、若い時から道を歩いて、道に迷ひ、途方に暮れたこともたくさんあつたけれども、必ず、誰かに出会ひ、助けてもらへたなあ・・・」と想ひ起こすのです。


さうして、このたびも、中に明かりがついてゐる消防団の施設の前にやつてきました。


中で、人の声がします。人の声つて、かういふとき、とても暖かく感じるものです。


「すみませーん」とわたしが声を上げてみると、中から屈強な男の人が出てきてくれました。


「すみません、スマホを持つてゐないものですから、駅までの道が分からなくなつてしまひました。ここから、どう行けばいいでせうか」とわたしが尋ねると、その人は「どこから来たの」。


「はい、向かうのイオンからです」。「はあ、そんで、歩いて行くの」「はい」「遠いよ」「はい」「ちょつと待つてて」。

さう言つて、中に入り、仲間の人と話しした後、また出てきてくれて、「この前を流れてる奥入瀬川に沿つて、まーすぐ歩いて行つたら、線路にぶつかるから、そこを左に曲がつて、また、まーすぐ歩いて行けば、着くよ」と教へてくれました。


「ありがたうございます。助かりました」と言ふと、にこつと笑つて、「気をつけてね」と言ひながら見送つてくれました。


青森の南部の訛りのあることばが、何か暖かいものをわたしに贈つてくれるのでした。


スマホがないから、かうして、人に道を訊ける、といふこともあります。


さうして、奥入瀬川沿ひを、誰も人がゐないのをいいことに、大声をあげて、なぜだか笑ひながら、歩いて行きました。








posted by koji at 23:56 | 大阪 ☀ | Comment(0) | 断想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。