2021年08月30日

語り口調の闊達さ 福翁自傳



EK-0010826.jpg



明治31年(1898年)、福沢諭吉が65歳の時、速記者を前にして語り尽くし、みづから校正し出版した『福翁自傳』。


幕末から明治にかけての激動の時代を、本当にさばさばした気性と透徹した先見性をもつて駆け抜けた男。


読んでゐて、そんな印象が最初から最後まで持続する、無類に面白い自伝でありました。


人生におけるなんとも身軽で闊達な彼の足取りは、その文体が如実に表してゐますが、とりわけ、この作品は口から語られたことばの並びをそのまま活かしてゐるので、その息遣ひとことばの運びが彼の気質とひとつになつて、まぎれもなく、ここに福沢諭吉といふひとりの人がゐるといふ感覚を読み手にもたらしてくれるのです。


ここに人がゐる、といふ感覚。ここで人が語つてゐる、といふ感覚。


それは、この上なく、貴重なものです。


このやうな健やかな人を知ることで、彼のことばを読む人、聴く人にも、その健やかさが流れ込んできます。


その健やかさは、自分自身を信じ、何かをとことんまでやり抜く、その貫く力から生まれて来てゐます。


すがすがしいのです。




posted by koji at 22:12 | 大阪 ☁ | Comment(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
■ 新着記事
宮沢賢治作「学者アラムハラドの見た着物」 (12/06)
醍醐寺の紅葉 (12/05)
かむながら (11/26)
感じあい語りあう人 (11/25)
袖ふる、といふことば (11/23)
藝術とは一歩後退すること (11/20)
冬よ 来たれ (11/19)
清らかさと暖かさ「宮沢賢治の世界」 (11/18)
幼な子の偉大なる感覚器官 (11/12)
2025.11.16.(日)京都円町 語りで聴く宮沢賢治の世界 そして歌とヴァイオリンのひととき (11/10)
■ カテゴリ
クリックすると一覧が表示されます。
ことばづくり(言語造形)(248)
アントロポゾフィー(189)
断想(582)
講座・公演・祝祭の情報ならびにご報告(468)
こころのこよみ(魂の暦)(521)
動画(358)
農のいとなみ(1)
うたの學び(92)
神の社を訪ねて(37)
アントロポゾフィーハウス(92)
声の贈りもの(5)
読書ノート(73)
絵・彫刻・美術・映画・音楽・演劇・写真(41)
ことばと子どもの育ち(13)
「ことよさしの会」〜言語造形に取り組む仲間たち〜(11)
■ 最近のコメント
5/7(水)からのシュタイナー著「いかにして人が高い世を知るにいたるか」毎週水曜日夜オンラインクラスへのご案内 by 諏訪耕志 (04/11)
待ち望まれてゐることばの靈(ひ)〜「こころのこよみ」オンラインクラスのご案内〜 by 諏訪耕志 (04/03)
こころのこよみ(第1週) 〜甦りの祭り(復活祭)の調べ〜 by (04/09)
12/10(土・夜)12/11(日・朝)オンライン講座「星の銀貨」を通して〜人への無理解と憎しみについて〜 by アントロポゾフィーハウス (12/07)
穏やかで安らかなこころを持ち続けること、しかし、目覚めること by 諏訪耕志 (04/23)
■ 記事検索
 
RDF Site Summary
RSS 2.0