2021年01月14日
声の贈りもの @ 『手ぶくろを買いに』
「シュタイナー幼児教育では、絵本の読み聞かせではなく、素話を子どもに聴かせます」と言はれるのをよく聞きますね。
そのことには、もつともな理由があり、子どもがお話を聴くとき、絵本の絵によつて、こころの内側に絵姿を自由に描く力を損なはないやうに、との配慮からです。
それは、もつともなのですが、やはり、親御さんにとつては、我が子に素話をするといふことも、ある意味、ハードルが高く感じられることでせう。
それならば、絵本といふものを通して、お子さんと親御さんが声のやりとりをする時間を一日の内、ほんの少しの時間にでも持つことができた方がいいのではないかと思ふのです。
もちろん、ことばの響きだけで、大人から子どもへとお話の贈り物ができれば、それはこの上なく素晴らしいことなのですが、そのことを承知した上で、絵本を通して親子のことばの時間を大切にしていくことを、言語造形をする者として提案したいのです。
お父さんやお母さんの息遣ひと声の響きこそが、子どもたちに取つて何よりの何よりの贈りものなのです。
「声の贈りもの」と題して、今日が第一回目。新見南吉作、黒井健絵の『手ぶくろを買いに』です。
冷たい雪にかじかんだ手を温めてあげたい。母狐は子狐に町まで手ぶくろを買ひに行かせます。しかし母狐は人間を恐れてゐます。かたや、子狐はいまだ無垢なまま世を信じて生きてゐます。心配と信頼。こころが微妙に交差する、冬の物語です。
●こんな読み方をしてみては?
月の光に照らされた白い雪と夜の闇。その明暗のコントラストが際立つ世界。
また雪の冷たさと、母と子の間に営まれる暖かさ。その寒暖のコントラスト。
そこからわたしたちは何を感じることができるでせうか。
絵の繊細なタッチを感じながら声に出してみませう。
そこから生まれる「こころの情」を子どもと分かち合ふことができたらいいですね。「寒いね、寒いね」「暖かいね、暖かいね」と言ひながら・・・。
【楽しんで読み聞かせをするポイント】
@まづは、息を吐きながら一文一文ゆつくりと
Aことばの身振りや、物語の絵姿を感じながら
B一音一音をていねいに
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