戸嶋靖昌の絵を求めて、秋田まで足を延ばしました。
『秋田県立美術館 戸嶋靖昌展 縄文の焔と闇』
http://shigyo-sosyu.jp/expo/toshima_yasumasa.html
彼の生涯に亙る画業をとつくりと観ることができるこの機会をどうしても逃したくなかつたのです。
絵とは何なのか、色とは何なのか、画家とは何をする人なのか、そんなことをずつと考へながらの3時間半、観ても観ても見飽きない、至福の時間でありました。
画面に描かれてゐる女の眼差しから「悲しみ」といふひとつのことばでは到底言ひ尽くせない混み入つた念ひが観てゐるわたしに向かつて放射され、その光を受けてわたしは「胸を衝かれる」といふことばの意味に、初めてリアルに撃たれるのです。
「遠くを見つめるクリスティーヌ」
この絵も、実部を観なければ分からないのですが、絵まるごとから浮かび上がり、結ばれてくる眼差しの力に圧倒されますまた、画面の遥か後方に向かつて、描かれてゐる男の頭から夢想する想ひが解き放たれ、伸び拡がりゆく様に、絵を観てゐるわたしは目覚めつつ真実と美に陶酔することの三昧境を知るのです。もののあはれを知るのです。
戸嶋靖昌といふひとりの男の青年期から死に至るまでの仕事の変遷を今回辿り、人といふものは、まこと、成長するのだ、なりかはるのだ、といふことを驚きと共に実感しました。
本当にここ秋田にまで来てよかつたと思ふと同時に、今日しかここに来て観ることのできないことを激しく悔しく思ひました。
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