カーネーション CARNATION
五十代も半ばになつて好きになつてしまつたロックバンド。
コロナウイルス禍の中、わたしにとつて、本当にこのバンドの音と歌声にどれほど励まされ、支へられてきたことか、といふ存在でした。
そのカーネーションが大阪に来るといふので、今晩、ライブに馳せ参じました。
直枝政弘氏のギターと歌声で一曲目がゆつくりと始まり、ズシン、とドラムとベースとキーボードが入つて来て、静かに情念に満ちた歌が朗々と歌ひ上げられるのを聴いて、いきなり、さう、いきなり、涙がボロボロと流れ出し、胸を鷲掴みにされてゐることに、自分自身で驚く。
直枝氏の切ないメロディーと歌とギターの凄いコンビネーション、ベースの太田氏とドラムの張替氏による太くうねるやうなグルーブ、深いセンスに裏打ちされた伊藤氏によるキーボードワーク、たつた四人の男たちによる練り上げられた極上の演奏と歌に、次から次へと喜びが足元から立ち上がつて来る。涙が何度も溢れ出て来る。こんなことは初めてです。
ゲストの山本氏のギターも凄かつた。さう、「凄い」といふことばでしか言へない鋭さと一曲一曲に相応しい雄弁さ。
そして、静かな佇まひから生まれる強い感情に満ちた直枝氏の歌。さう、歌を聴きに来たのだ。歌が、聴きたかつたのだ。本当に、歌が聴けて、よかつた。
直枝氏も太田氏(カーネーションはこのおふたりで活動してゐる)も御年六十を超えてをられる。自分よりも年上の男たちが、こんなにもみづみづしく活き活きと、かつ味はひ深い仕事をしてゐるのを、目の当たりにして、生きて行く希みのやうなものまでももらつてゐることを感じる。
十四の歳からロックやソウルのライブコンサートに行き続けて来たのですが(一番最初は1979年の大阪フェスティバルホールでのクイーンでした!)、今晩は、もしかしたら五本の指で数へられる中に入る、わたしにとつて忘れられないライブだと感じてゐます。
会場に、小学生の男の子と父親らしき人が来てゐて、終演後、二人で話しながら、夜の梅田の街を帰つて行く後ろ姿を見ながら、わたしも家路に着きました。親子で、こんなにすばらしい音楽を、ともに、聴けるなんて、本当に、最高じゃないか。
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