2020年10月21日

ふたつの悪魔



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己れが愛してゐることを、
仕事としてすることができることほど、
ありがたいことはない。
今朝、仕事に行くために、
長い時間、電車に乗つてゐて、
心底、さう思つたのでした。


二十九歳のとき、
師匠である鈴木一博さんの講義を聴き始め、
言語造形の稽古をつけてもらひ始めました。
そのとき、すぐに、
アントロポゾフィーを己れのものにして、
自分自身のことばで自由自在に語ること、
そして言語造形といふ芸術を生きること、
そのふたつのことを仕事にするのだ。
さう、こころを決めたのでした。
彼の講義を聴きつつ、
おのづから、さう、こころを決めてゐたのでした。


こころを決める。
ああだ、かうだ、言はずに、
自分の実力や、向き不向きなど思案せず、
こころを決める。


その不思議な志の誕生と巡り合はせに、
ただただ、感謝するしかないのです。


今日も、こころから語らせてもらつたことを、
こころから聴いて下さる方々がゐて下さる。
こんなにありがたいことはありません。


言語造形の舞台についても、
もうこの世に生きてゐる間、
ああだ、かうだ、言はずに、
ただただ、こつこつと、根気を持つて、
ひたすら創り続けるだけです。
そのために毎日稽古できることこそが、
自分自身への信頼を育て、
こころとからだを健やかになりたたせてくれます。
これも、本当にありがたいことです。


今日、させてもらつた講義は、
「理想主義」についてでした。


「理想」と「現実」といふことばは、
いまは、対義語のやうにして人々に使はれてゐますが、
そもそも、どちらも、
人が自己との闘ひから勝ち取るものであり、
他者や世から与へられるものではなく、
自分自身が創り出すものです。


本当の「現実」、本当の「理想」とは、
まぎれもなく、
「わたしがわたしになる」といふことではないでせうか。


「いい人になる」「素晴らしい成果を産み出す」・・・
それらも理想となりうるでせうが、
「わたしが〈わたし〉になる」
それこそが真の理想であり、
それこそが真の現実であり、
それは自己教育なしにはなしとげられないものです。
その他のことはすべて、
「わたしが〈わたし〉になりゆく」ことに伴つて、
必然的についてくる。


しかし、その自己教育を阻むふたつの働きかけが、
すべての人に及んでゐる。


ひとつは、ルーツィファーといふ、
人を虚ろな思ひ上がり、高慢、妄想、夜郎自大へ、
さらにはそれらの傾向と重なつて、
「人から認めてほしい」
「人から褒められたい」
「人から愛されたい」
といふ承認欲求の過剰、
と同時に他者への批判へと誘ふ、
悪魔、堕天使からの働きかけです。


まうひとつは、アーリマンといふ、
人を自己不信へ、自信喪失へ、自暴自棄へ、自殺へ、
さらにはそれらの傾向と重なつて、
諦め、不安、過剰な享楽、
自己への不満、自己への必要以上の批判へと誘ふ、
悪魔、堕ちた大天使からの働きかけです。


リアリスティックな自分自身の姿を直視せず、
思ひ上がつた自己像といふ幻想の中に戯れ続ける人。
それは、わたしのことでした。
ルーツィファーといふ堕天使に、
なずみ続けてきた長い年月でした。


幻想の中で自己に戯れることと、
リアリティーの中で自己と闘ふこと。
この間の違ひは、
年月を経れば経るほど大きくなつて来るのでした。


一方、アーリマンからの働きかけは、
日々、わたしの日常を当たり前に蝕んで行きました。
それは、わたしのまことのエネルギー、精神からの力を、
密やかに、しかし、確実に、毎日、殺いで行きました。
自己不信を確かに証明するやうに、
外の世もそんな仕事の成果をわたしに見せつけるのでした。


これからも、
そんなふたつの悪魔的な働きかけは、
休まずわたしに及ぶのですが、
「すべてに感謝すること」
「精神的なことに関心を持つこと」
「こつこつと根気を持つて、
 仕事を繰り返し続けて行くこと」
この三つを練習することによつて、
ふたつの悪魔に向き合ひつつ、
その働きかけを凌いで行く。
さうして少しづつ自由への道を歩みゆく。
それこそが人生であり、
さうして、
わたしが〈わたし〉になりゆくことこそが、
我が理想であることは確かです。


練習することを、こころに決める。
それだけです。




posted by koji at 07:39 | 大阪 | Comment(0) | アントロポゾフィー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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