
二十二年前に鈴木一博さんの翻訳で出版された、
ルドルフ・シュタイナーの『テオゾフィー』。
この本を読むことが、
どれほどわたしの人生において、
とりわけ三十代から四十代、
支へになつてくれたことか・・・。
その書が、同じ翻訳者によつて、
新しい版として出ました。
『人と世を知るということ』と、
タイトルがアレンジされてゐます。
早速読み始めました。
声に出して訓みながら、
おのづと自分自身のこころの働きを確かめることになります。
それは、言語造形をしてゐる時と、
全く同じ感覚です。
鈴木さんの仕事はずつとさうだつたと、
読みながら念ひます。
読む人のこころに、
内なるアクティビティーを呼び起こさうと、
意図することばの使ひ方、こころの使ひ方。
さういふこころから精神への道を歩くことを、
読書を通して促す指南者でもありました。
「事と心と言はひとつなり」
さう本居宣長が書き記したことを、
鈴木さんは自身の見解・見識を述べる時だけでなく、
ドイツ語の翻訳でも成し遂げてをられる。
まさしく「学」を全身全霊で生きる人は、
皆そのことを証明してくれてゐます。
わたしの非常に狭い管見の限りではありますが、
本居宣長も鹿持雅澄も内村鑑三も小林秀雄も、
ゲーテもフィヒテも、
そしてシュタイナー、鈴木一博も、
「事」と「こころ」にひとつに重なる「ことば」に、
すべてを賭けてをります。
彼らは皆、
いはゆる「学者」といふ、
ある意味狭くカテゴライズされた立場などから、
自由に力強く羽ばたいてゐる人ばかりです。
そのやうな著者の書を出版してくれる、
「Hannogi Books」さんにこころから感謝です。
そして、かうして新しい版が出ることによつて、
古い読者には改めてじつくりと読み直させ、
また新しい読者がういういしく読み始める、
そんな機縁が生まれます。
日本語によつて、
アントロポゾフィーを語ること。
その意味深い仕事を、
しつかりと見つめ続けていきたい。
わたしの志もそこにあります。
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