
山上憶良の「秋の七草」として知られている歌二首。
『萬葉集」からの歌です。
秋の野に 咲きたる花を 指折り(をよびをり)
かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花(をみなえし)
また藤袴 朝貌(あさがほ)の花
花の名を唱へるだけのこの歌。
しかし、その名を發音するとき、
部屋の空閧ノ、
その花、その花の奥深い内部が開かれ、
各々の植物がその精神を語りだす、
そんな感覺が生まれたのでした。
さうして、秋の野原がこころの目の前に拡がるのです。
すると、不覺にも目に涙が溢れてしまひました。
親しくて、懐かしく、そして悲しい、感情です。