2020年07月22日

意味よりもリズムを われらが萬葉集 その一


 


 
 
我が国最古の抒情歌集『萬葉集』。
 
 
その開巻第一首目の歌、
第二十一代・雄略天皇による長歌を
歌はせていただきました。
(訓みは、土佐の国学者・鹿持雅澄のものです)
https://youtu.be/TTRcCkYLQvE
 
 
籠もよ み籠持ち 
堀(ふ)串(くし)もよ み堀串持ち
この丘に 菜摘ます子 
家告(の)らせ 名のらさね
そらみつ 大和の国は 
おしなべて 吾(あれ)こそ居れ 
しきなべて 吾(あれ)こそ座(ま)せ 
吾(あ)をこそ 夫(せ)とは告らめ 家をも 名をも
 
 
なんと、恋の歌です。
野に若菜を摘む、をとめに対する求婚の歌です。
 
 
我が国において、
精神文化の中心であり、かつ、
神と通じる霊的な役割を荷ひ続けられる天皇様が、
をとめに恋をし、結ばれ、御子をお生みになること、
それは、国といふ共同体が弥栄に栄へゆくための、
とても、とても、たいせつなことなのでした。
 
 
だからこそ、
『萬葉集』の第一首目なのです。
 
 
言語造形による朗唱。
 
 
ことばのひとつひとつの意味よりも、まづ、
短短長、短短短長・・・
と重ねられる響きのリズムと母音の広がり、
それらの音楽的要素を感じてみませう。
 
 
その、上昇していくおほらかな調べは、
この歌を口ずさむたびに、
わたしをまるで桃源郷の世界へと、
いざなふやうなこころもちにさせるのです。
 
 
共に味はつていただくことができればなによりです。
 
 
 
 
 
なぜ、『萬葉集』といふものが、
この世に生まれたのか。
 
 
それは、当時の日本が危機に直面してゐたからです。
 
 
我が国の先祖伝来の精神文化が、
隣の大国・唐からの最新の文化・文明に、
駆逐されさうになつてゐたからです。
 
 
ご先祖様から受け継いできたものの考へ方、
暮らしの立て方、人生の送り方、
そして、何よりも、古くからのことば遣ひ、
それらが失はれさうになつてゐたからです。
 
 
明治の文明開化の約一千年前にも、
同じやうな深刻な矛盾を、
我が国は抱えざるをえなかつたのです。
 
 
『萬葉集』は、
古くからのことばに対する信仰、
ことばに対するたいせつな感覚を保持し、
未来永劫の日本民族に、
そのことばの美、言霊の力、言語芸術を、
なんとか残さうとして、
大伴家持によつて編まれたものです。
 
 
この『萬葉集』が編まれたことによつて、
その後も辛くも、
日本は日本であり続けることができたのだ、
さうわたしは確信してゐます。
 
 
 


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