静かさに満ちてゐる住吉のやしろ。
朝ごとに参るたびに、
この地を産土の地として、
生きてくることができたことを
仕合はせに思ふのです。
これほどに美しいところであつたか。
神のゐますところ、かくも近くあつたか、と。
今回のわたしたちの舞台
『 をとめ と つるぎ 』は、
ここの御宰神であられる、
住吉三神と神功皇后の御登場によつて、
幕が閉められます。
神功皇后(劇中では息長帯比売命)は、
突然、御崩御された仲哀天皇に代はられ、
天照大御神の御こころを受けられた
住吉三神の御神勅のままに、
征戦を率ゐ給ひて、
韓の国に船で向かはれます。
このときの御進発に当たつての、
全軍に下された神功皇后の御ことばが、
日本書紀に記されてゐます。
――――
吾(あ)れ婦女(たをやめ)にしてまた幼し、
しかれどもしばらく
男貌(ますらをのすがた)をかりて、
あながちに雄略(ををしきはかりごと)を起し、
上は神祇(あまつかみくにつかみ)の
霊(みたまのふゆ)を蒙(かがふ)り、
下は群臣(まへつきみたち)の助けによりて、
兵(つはもの)を起して高き波を渡り、
船を整へてもつて財の土(くに)を求めむ。
もし事ならば群臣ともに功(いさをし)あり、
事ならずば吾(あ)れ独り罪あらむ。
すでにこのこころあり、それ共に議(はから)へ。
――――
ここに、
「事ならずば吾(あ)れ独り罪あらむ」とは、
住吉の三柱の大神の御神勅のままに、
事を決する一大決心を述べられてゐます。
臣下にもし罪があつて、
事が不成功に終はつたとしたら、
その罪はすべてご自身にあると、
申されてゐます。
わたしたちの劇では、
神功皇后はかう申されてゐます。
「わたしが、つるぎをとります」
最大の男性性の体現であり、
また神の意をそのままに受け入れられる、
最大の女性性の体現者。
その方が、神功皇后であります。
このたびの劇には描かれてゐませんが、
御子の応神天皇を補佐する、
その後の御摂政でも、
神功皇后は政治を執り行ふときは、
ことごとく、
神の意を聴きながら、
なされたやうです。
神功皇后が鎮まられてゐる第四本宮。朝日に浮かぶオーブが美しい。
言語造形劇『 をとめ と つるぎ 』
https://kotobanoie.net/play/
大阪公演3月28日(土)
東京公演3月29日(日)