東京の半蔵門にある、
戸嶋靖昌記念館を訪れました。
http://shigyo-sosyu.jp/toshima/index.html
この美術館を開いた執行草舟氏の著書をこよなく
愛読し、熟読し、精読するわたしにとつて、
ここを訪れることは、数年来の念願でした。
初めて戸嶋の絵を観るわたしに、
主席学芸員の安倍三崎さん、坂田さんが、
勿体ないほどのまことに暖かい対応をして下さり、
ていねいでこころの籠もつたお話をして下さいました。
「おもてなし」といふ、
昔から日本人が大切にしてきた行ひの恩恵に、
わたしは触れ、浴させていただいたのです。
戸嶋の絵の前に立ち、
わたしは「これが絵だ」といふ、
身も蓋もない言ひ方しかできないやうな、
烈しく強い振動と、
奥行きへと引き摺り込まれるやうな運動を感じ、
それは、
絵といふ芸術でのみ感じるものでありました。
そして、思ひもかけず、
執行氏の書斎でもある社長室へ
招き入れていただいたのでした。
執行氏はまだ出社されてゐなかつたのですが、
そこに満ち満ちてゐる渦巻きのやうな精神が、
部屋の隅々に、
膨大な本の背表紙といふ背表紙に、
ぶち当たつては還流してゐるのでした。
精神の労働のための工房の只中にゐるやうな、
興奮と感激がわたしを打つのです。
執行氏御本人がゐらつしゃらなくて、
よかつたと思ひました。
また、執行氏の文業から感じてゐた精神が、
案内をして下さつたお二方の
ことばの端々、隅々に満ちてゐるのです。
死を見据えるひとりひとりの人が、
どうひとつひとつの仕事と向き合ひ、
どうひとりひとりの人と向き合ひ、
どうひとつひとつの芸術作品と向き合ふのか。
おそらく、社員の方々、皆、
そのことの実行に、
体当たりで毎日を費やされてをられます。
その姿を目の当たりにし、
わたしはこの記念館(企業体)は、
現代における「奇跡」だ、
そんな念ひで千鳥ヶ淵の帰り道を歩きました。
執行草舟氏の社長室にて。三島由紀夫自筆の額の前。
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