2019年09月12日

『平成記』(小川榮太郎氏)


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●この年(平成十四年・2002年)も日本語ブームが続いた。齋藤孝の『声に出して読みたい日本語A』が計240万部の大ベストセラーになつたのである。が、残念ながらこの日本語ブームは、文学の読者層を殆ど開拓しなかった。 
 
 
●文化では啓蒙も大事だが、啓蒙がその場しのぎのビジネスになると、寧ろ文化を衰弱させる。文化で重要なのは、層を拡大する以上に、ヒエラルキーの頂点を構築する事だ。鴎外、漱石、露伴から三島由紀夫、大江健三郎を読む伝統を保持しさえすればすそ野は逆に広がる。この文化事業の基本に、平成出版界は逆行し続けた。
 
 
●一流の飲食店が味でしのぎを削れば、安価なファストフードの味も向上する。逆にマクドナルドを無限に増やしても、食文化の向上に繋がらず、資本や才能がファストフードにばかり集中すれば、食文化は崩壊する。文壇・論壇では平成を通じてそれが起きた。
 
 
●マクドナルドを増やすのでなく、高み、偉大さを求心力とした共同体を形成すべきだったが、「脱構築」の冷笑主義に飲み込まれ、業界ギルドの安易に流れ、文化事業の逆説を真に理解する者がいなかった。平成日本の最大の悲劇である。
 
 
(225ページ)
 
 
 

出版界だけでなく、平成時代のわたしたち男は、各々、頂点を極めるための熾烈な闘ひを己れに課すことを止めてしまつたのではないかなあ。
 
三十年といふ時間、わたしが大学を出てからの三十年間なのだ・・・。
 
いま、令和といふ新しい時代に入つたばかり、元年。
 
経済界であれ、政治の世界であれ、学問・芸術の世界であれ、本当に生きがいを感じたいなら、ひとりひとりが精神の高みを目指して自分の人生を全身全霊で生き切ることだと、強く念ふ。
 
さうして、日本の文化そのものが再び精神のヒエラルキーを築き上げ、若い人や子どもたちが、いや、この自分自身が、その高みを目指して、発奮しながら生きて行く、そんな令和の時代をつくつていきたいと、強く念ふ。
 
それは、男性性の健やかな発露である。
 
 


posted by koji at 17:54 | 大阪 ☀ | Comment(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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