2019年08月20日

こころのこよみ(第17週) 〜ざわめきが止む〜


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世のことばが語る、
 
そのことばをわたしは感官の扉を通して
 
こころの基にまでたづさへることを許された。
 
「あなたの精神の深みを満たしなさい、
 
わたしの世のひろがりをもつて。
 
いつかきつとあなたの内にわたしを見いだすために」
 
  

Es spricht das Weltenwort,
Das ich durch Sinnestore
In Seelengründe durfte führen:
Erfülle deine Geistestiefen
Mit meinen Weltenweiten,
Zu finden einstens mich in dir.  
 
 
 
閑さや岩にしみ入る蝉の声  松尾芭蕉
 
「蝉の声」は耳に聞こえる。時に、聴く人の全身を圧するやうに鳴り響く。
 
「閑さ」はどうだらうか。「閑さ」は、耳を傾けることによつて、聞き耳を立てることによつて、初めて聴くことができるものではないだらうか。
 
「閑さ」とは、本来、耳といふ感官を超えた「感官」によつて受け止められるものではないだらうか。
 
芭蕉は、「蝉の声」を通して「閑さ」を聴いたのだらうか。「閑さ」を通してあらためて「蝉の声」が聞こえてきたのだらうか。
 
そして、芭蕉は、「蝉の声」の向かうに、「閑さ」の向かうに、何を聴いたのだらうか。
 
芭蕉は、旅しながらメディテーションをする中で、そのふたつの聴覚の重なりの向かうに、己れが全身全霊で何かを受けとめるありさまを「おくのほそ道」に記した。
 
それは、芭蕉によるひとつの精神のドキュメントであり、心象スケッチであり、春から秋にかけての「こころのこよみ」であつた。
 
 
この週の『こころのこよみ』に、「世のことばが語る」とある。
 
わたしもことばを語る。
 
しかし、世がことばを語るとはどういふことだらうか。「世のことば」が語るとはどういふことだらうか。
 
その「ことば」は、この肉の耳には聞こえないものである。耳といふ感官を超えた「感官」によつて受け止められるものである。メディテーションを通して、「こころの基にまでたづさへることを許された」ことばである。
 
 
『いかにして人が高い世を知るに至るか』より
  
 人が人といふものの中心をいよいよ人の内へと移す。
 人が安らかさの一時(ひととき)に
 内において語りかけてくる声に耳を傾ける。
 人が内において精神の世とのつきあひを培ふ。
 人が日々のものごとから遠のいてゐる。
 日々のざわめきが、その人にとつては止んでゐる。
 その人の周りが静かになつてゐる。
 その人がその人の周りにあるすべてを遠のける。
 その人が、また、
 そのやうな外の印象を想ひ起こさせるところをも
 遠のける。
 内において安らかに見遣るありよう、
 紛れのない精神の世との語らいが、
 その人のこころのまるごとを満たす。
  
 静けさからその人への語りかけがはじまる。
 それまでは、
 その人の耳を通して響きくるのみであつたが、
 いまや、その人のこころを通して響きくる。
 内なる言語が ―内なることばが― 
 その人に開けてゐる。
 
 
この夏の季節にメディテーションをする中で、精神の世が語りかけてくることば。
 
 あなたの精神の深みを満たしなさい、
 わたしの世のひろがりをもつて。
 いつかきつとあなたの内に
 わたしを見いだすために。
 
この「いつか」とは、クリスマスの頃であらう。この週の対のこよみが、第36週である。http://kotobanoie.seesaa.net/article/410652960.html
 
そこでは、「世のことば」キリストが、人のこころの深みにおいて密やかに語る。
 
芭蕉は、俳諧といふことばの芸術を通して、四季の巡りと共に深まりゆくこころの巡りを詠つた人である。
 
彼はいまも、夏の蝉の声といふ生命が漲り溢れてゐる響きの向かうに、静けさを聴き取り、その静けさの向かうに、「世のことば」を聴いてゐるのではないか。
 
 
 
世のことばが語る、
そのことばをわたしは感官の扉を通して
こころの基にまでたづさへることを許された。
「あなたの精神の深みを満たしなさい、
わたしの世のひろがりをもつて。
いつかきつとあなたの内にわたしを見いだすために」
 


posted by koji at 09:04 | 大阪 ☔ | Comment(0) | こころのこよみ(魂の暦) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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