
血といふものは、とても謎めいてゐるものだ。
男と女では、流れてゐる血に違ひがあるのではないだらうか。
これは、わたし個人の思ひなので、ご笑覧いただき、できればご了解いただければ幸ひである。
男の血は、外なる対象に、己れの何かを与へ、己れ色に染めようとする。
女の血は、外なる何者かから、何かを受け取り、その何者かの色に染まらうとする。
男がとかく「自分が、俺が、わたしが」といふことを主張したがり、能動的で、ややもすると他者に対して戦闘的で、野心や支配欲に動かされやすいのに比べて、女はどちらかといふと、受動的であり、共感的であり、むしろ他者を受け入れることを望んでゐるやうにさへ思へる。
これは、意識的なものといふよりかは、ほとんど無意識の領域、夢のやうな意識の領域で生起してゐることではないだらうか。
それゆゑ、結婚の式を迎える時、伝統的には女は白無垢を纏ふ。
さらには、女は、無意識の領域で、できうる限り優れた血を受け取りたいと希つてゐる。
そして、優れた血から優れた種を宿し、よきものをこの地に生み出していきたいと希つてゐる。
己れの本能的な根柢の希ひからかけ離れた血を受け取つてしまつては、己れの存在そのものが乱され、壊されかねない。
だからこそ、ほとんど本能的に女は男を選ぶ。
しかし、基本的に、女は待つ。
高い精神を宿してゐる男の血が己れに注がれることを待つてゐる。
血とは、道であり、道を人の世に敷くために、男は高い精神を己れの血に宿し、その血を女に注ぎ込まうと、幾度もの生を経ながら切磋琢磨し続けてゐる。
女は、己れを守るため、家を守るため、そしてつひには、道を守るために、男から高い精神を宿した血を受け取るために、己れを磨き続けてゐる。
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