
芸術において、自分自身を解放する、自分自身をみつめる、そのことの素晴らしさ、尊さ。
そして、つひには、芸術とは、「道」であることに気づくことの、妙なること。
そのことに、気づくことは、芸術が自己実現を促すことといふよりも、「道」そのものを尊び、存続させていくことに、人の務めがあることに気づくことでもあるでせう。
とりわけ、日本に於いて芸術とは、そもそも、すべて「道」です。
「道」とは、人がゆくところ、人が己れの足を動かせて歩くところです。
さう言へば、わたしがまだ若くて、随分精神的にも未熟だつた頃、フォルメン線描といふ、シュタイナー芸術のレッスンに出た時、わたしが、今から思えば非常に「つまらない」質問を先生にしたことを想ひ出します。
すると先生は、「づべこべ言はずに、手を動かせ」と厳しくわたしに言ひました。
まだ三十代前半の若い女の先生でしたが、なぜだか、すぐにわたしは羞恥心と共に、「これは、道なのだ」と直感しました。
わたしは、日本人のさういふ先生に教へてもらへたことを幸運に思ひます。
言語造形も、「道」です。
ことばの発声に取り組めば取り組むほど、ことばそのものの秘密、それを発声してゐる人の秘密、そのことばによつて描かれようとしてゐるものごとの秘密を、だんだんと明かすやうになる。
ことばとは、まさしく神から人だけに与へられてゐる「自然」です。
ことばは、己れの「自然」を、人によつて、解き明かされたがつてゐます。
人によつて、造形されたがつてゐます。
その「自然」の秘密を解き明かしていく「道」をしつかりと歩いて行くための稽古を毎日続けていくこと。
そして、その「道」を求める人にここにもひとつの「道」があることをお伝へすること。
それが、わたし自身にことよさしされてゐることだと改めて念ひます。
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