2019年02月20日

高瀬陽子さん 『キリスト生誕劇 2018』の奇跡


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昨年暮れの『キリスト生誕劇 2018』に羊飼いのガルス役で出演した高瀬陽子さんが、感想文を書いたと言つて、A4用紙4枚もの分量の文章を今日わたしに手渡してくれた。 
 
「大空高く自由に飛べる」
 
本当に、本当に、素敵なことだと思ふ。
 
 
――――――― 
 
『キリスト生誕劇 2018』の奇跡   
2019.2.19. ガルス役 高瀬陽子
 
生誕劇を終えて、しばらくは余韻にひたっていた。いろいろなセリフが、日常のすきまに入り込んで、頭に浮かんでは、そのまま居座った。
 
やがて日常生活に慣れた頃、何か以前と違う感覚がする。ぼんやりとしているが、今までとは違う時間の流れるときがある。わたしの口から出ることばも頭でああだこうだと考えあぐねることが少なくなった。感じたことをそのまま話すことがラクにできるし、その方がうれしい。
 
『キリスト生誕劇』に出演しようと決意したのは、諏訪先生に「高瀬さんは表現したい人だ」と声をかけられたからだ。
 
忘れかけていた。わたしは舞台が大好きだった。ずっと心の奥に置き去りにしていた気持ちを思い出した。わたしの中のおさなごと出会いたい。何かにとらわれることなく、自由に思うまま感じるまま動きたい。
 
4月から始まった生誕劇の稽古。初めて会った人達なのに、どこか、なつかしささえある安心感に包まれる。稽古前のシェアリングのたびに、心に浮かぶ日々のわだかまりがするするとほどけていく。
 
ところが、ガルスのセリフが、なかなか覚えられない。相手のセリフと呼吸を共にする。やりとりの流れやタイミングにのれない。けれども、先生は「大丈夫だ」と言う。何がどう大丈夫なのか、わからないけれど、先生がそうおっしゃるのなら、信じて進もうと思った。
 
ことばとからだが一致しない。うちふるえ、あふれるような感情が出てこない。どこか引いてながめている自分がいる。わたしのおさなごは、すねてしまったのか。
 
娘がまだ小さい頃、「わたしは、わたしの応援団長になる。世界中の人がわたしを認めなくても、わたしだけは、たったひとりでも私を認める」と、自分に誓った夜があった。わたしは、わたしを好きでいたい。できないわたしも、言えないわたしも、がんばれないわたしも、すべてまるごと好きでいたい。
 
11月になっても、どんな劇になるか自信がなかった。生誕劇のチラシを誰に配ろうか。是非観に来てというには勇気がいった。でも、伝えるだけでも伝えようという気持ちになった。そして、「行けないけど、応援してるね」という友人の言葉に強い力をもらった。
 
ここだけでなく、前に出ていく。前に、前に。やがて、足の裏が感じられるようになった。確かに大地と地球とつながっている足がある。冷えきった体に血が通っていく。体に流れるあついものが感じられるようになった。
 
ホールでの舞台稽古。板の上に立つ。じわじわとわきあがってくるものがあった。
 
本番前日、共演者と息のタイミングがあわない。自分をさらわれたような不安感の中にいた。帰宅すると、20年ぶりに電話をくれた友人がいた。公演を観に来てくれるという。わたしの不安を話せた天の声だった。それからわたしの時間は、ゆったりと流れはじめた。
 
本番では、すべてを天にまかせた。頭の中で台本のページをめくらない。ただただガルスとして立つ。全身をつかって、ガルスのことばを相手に届けたい。
 
舞台袖には、歌の先生が両手を広げて一緒に動いて伝えてくれている。すべての人の力がこの舞台を動かしていると感じた。
 
歌のレッスンに入る前に、自分の名前にメロディをつけて歌うと、同じメロディで皆が呼応してくれる。初めてそれを聞いたとき、わたしのおさなごがとびはねた。
 
この生誕劇で、わたしはわたしの底力を実感した。道はひらく。やりたいと思ったことは、まず不安が先走ってしまったけれど、今は必ず叶うといえる。あくせく思いわずらうことはいらない。やれるだけやってみる。すべてを解き放って、大空高く自由に飛べるような気がしている。
 
終演後ロビーに出ると、「いいものをみせてもらった。よかったわ」と、あまり話さない友人はかみしめるように言った。
 
―――――――
 
 
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