2019年02月18日

言語造形を通して俳優術に迫る@

 
俳優にとつて、己れのからだは、その俳優によつて奏でられる楽器であるがゆゑに、わたしたちは、己れの「からだ」を親しく知つてゆくことを要します。
 
ピアノの奏者がピアノをよく知ることを要するやうにです。
 
どのやうな立ち方、歩き方をしてゐるのか、そのときに、足の裏のどの辺りに重心がかかりがちであり、膝をどう曲げてゐるのか、腕をどう動かしてゐるのか、等々、己れのからだを親しく観る必要があります。
 
そして、わたしたちは言語造形に勤しみながら、己れの声を己れみづからで聴くことができるやうになるまで、練習を重ねることを要します。
 
己れの発したことばが、どういふ形をもつて、どういふ動きをもつて、喉からすつかり放たれ、空気に響き渡つていくかを、感官をもつて、また感官を越えて、観ることができるやうに、練習されてしかるべきなのです。
 
昨日、『ことばの家 諏訪』で行つてゐます『普遍人間学の会』での言語造形の時間に、こんな話をさせてもらひました。
 
ーーーーーーーー 

ある役者がゐました。
 
彼は、見た目の姿も、声も、ほとんど役者には向いてゐませんでした。その彼が、演じる芸術について、かう述べてゐます。
 
「もしわたしが舞台にただ立つにまかせて立つてゐたとしたら、わたしは役者が務まらなかつたでせう。
 
からだは小さいし、猫背ですし、しわがれ声で、顔は不細工です。しかし、わたしはわたしなりにやつて来ました。
 
舞台でのわたしは、常に三人の人です。
 
一人は、小さく、猫背の、しわがれ声で、不細工な人です。
 
二人目は、猫背と、しわがれ声から全く抜け出してゐる人、まぎれなくイデ―であり、全く精神である人です。その人をわたしは常に前に迎えることになります。
 
そして、いよいよ三人目の人です。わたしは、さきの二人から抜け出し、三人目の人として、二人目の人と共に、一人目の、しわがれ声で、猫背の人をもとに演じます」
 
(ルドルフ・シュタイナー『演じるといふ芸術について』から)

 
 
ーーーーーーー
 

わたしたち、言語造形をする人は、この三つの分かちを、常に意識して舞台に立つことを修練していきます。
 
いつも格好よくあらうとする人、いつも美しくあらうとする人は、己れのからだについてなにひとつ諾ふことをしないゆゑに、己れのからだとの関わりの中で己れを知るといふことができません。
 
からだ、そして声、それは、わたしたちが己れみづからを知るためのたいせつなたいせつな元手なのです。
 
 
 


posted by koji at 21:34 | 大阪 | Comment(0) | ことばづくり(言語造形) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
■ 新着記事
ひのみやこ 主催 第1回 日本文化に根ざすシュタイナー教員養成講座 講師陣ご紹介@ (10/09)
日本文化に根差す第1回シュタイナー教員養成講座 in 宮城県蔵王町 ひのみやこ主催 (10/07)
こころのこよみ(第27週) (10/04)
理想をことばに鋳直すお祭り ミカエルのお祭り (09/29)
こころのこよみ(第26週) ミカエルの祭りの調べ (09/28)
大阪帝塚山「ことばの家」さよならパーティー (09/27)
エーテルの世を描いている古事記 (09/24)
頭で考へることをやめ 胸のチャクラからの流れに委ねる (09/23)
命綱としての文学 (09/22)
和歌山岩出 アントロポゾフィーとことばづくりの学び (09/17)
■ カテゴリ
クリックすると一覧が表示されます。
ことばづくり(言語造形)(236)
アントロポゾフィー(180)
断想(563)
講座・公演・祝祭の情報ならびにご報告(440)
動画(311)
アントロポゾフィーハウス(92)
声の贈りもの(5)
うたの學び(88)
神の社を訪ねて(37)
こころのこよみ(魂の暦)(471)
読書ノート(71)
絵・彫刻・美術・映画・音楽・演劇・写真(40)
ことばと子どもの育ち(13)
「ことよさしの会」〜言語造形に取り組む仲間たち〜(11)
わたしの来し方、行く末(3)
■ 最近のコメント
待ち望まれてゐることばの靈(ひ)〜「こころのこよみ」オンラインクラスのご案内〜 by 諏訪耕志 (04/03)
こころのこよみ(第1週) 〜甦りの祭り(復活祭)の調べ〜 by (04/09)
12/10(土・夜)12/11(日・朝)オンライン講座「星の銀貨」を通して〜人への無理解と憎しみについて〜 by アントロポゾフィーハウス (12/07)
穏やかで安らかなこころを持ち続けること、しかし、目覚めること by 諏訪耕志 (04/23)
教育の根本 by 諏訪耕志 (06/21)
■ 記事検索
 
RDF Site Summary
RSS 2.0