2018年11月07日

世は美しい


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「百人一首の歌をいまやつてるねん」と言ひながら、小学四年生の次女が、国語の教科書を持つてきました。
 
 

奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の
声聞く時ぞ秋は悲しき 
猿丸大夫
 

秋風にたなびく雲の絶え間より
もれ出づる月の影のさやけさ
左京大夫顕輔
 

嵐吹く三室の山のもみぢ葉は
龍田の川の錦なりけり
能因法師

 
 

鹿の鳴き声が悲しいといふこと。
 
雲からもれ出づる月の光をうち見るときの感覚を「さやけさ」といふことばで言ひ表すといふこと。
 
川面に落ちたたくさんのもみぢの葉の流れる様を「錦」と見立てること。
 
子どもにとつては、いまだ経験したことのない景色と感情かもしれません。
 
しかし、まづ、このやうに、日本人は、詩人によつて「選ばれたことば」で、世を観ることを習つてきたのです。
 
さうして、鳴く鹿の声は悲しく哀れだ、散る桜は美しい、と感じてきたのです。
 
そのやうに詩に、歌に、誰かによつて、ことばで言ひ表されてゐなければ、ただ、鹿が鳴いてゐるだけであり、ただ、桜の花びらが時期が来たので散つてゐるだけとしか、人は感じられないはずです。
 
国語とは、価値観であり、世界観であり、人生観であり、歴史観です。
 
世は美しい。
 
その情を最も豊かに育むことができるのは、小学生のころ。
 
国語の風雅(みやび)を謳歌してゐる古い詩歌が、そんな教育を助けてくれます。
 
この世がどんな世であらうとも、子どもたちのこころの根底に、「世は美しい」といふ情が脈々と流れ続けるやうに、わたしたちができることは何だらう。
 
そんなことを思ひました。
 


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大阪・名張 言語造形公演『山月記』
11月30日(金)・12月1日(土)
https://kotobanoie.net/play/
 
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ことばの家 クリスマス公演・キリスト生誕劇2018
2018年12月25日(火)17時開演
於 大阪市立阿倍野区民センター小ホール
https://www.facebook.com/events/894100854122598/
 
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2019年1月開校!
『言語造形と演劇芸術のための学校』
https://kotobanoie.net/school/


posted by koji at 22:47 | 大阪 ☀ | Comment(0) | 断想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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