いま、机の上に何冊もの本を積み重ねてしまつてゐる。
どの本も読むほどに唸らされてしまふ奥行きの深い内容を湛へたものだ。
それらの本は、わたしにとつては、精神からの糧である。
その精神からの糧は、こころに与へられる。
頁から頁へ、文字列から文字列へとゆきわたつてゐるその精神を、なんとか読み取る。
萬巻の書をよみ、萬里の道を征け、とは、かの富岡鉄斎翁のことばであつた。
人には、時間といふものが与へられてゐる。
この「時」とは、流れゆくものであるが、一方、その人その人の立ち停まるその場に於いて、垂直に、天へと昇り、地の坑へとくだりゆくものでもある。
動かずに、その場で、下へと降りよ。そして、天へと昇れ。
本を通して、精神を読む作業が、そのことを教へてくれてゐる。
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