2018年01月20日

柳田國男の「老読書歴」を読んで


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毎日風呂に入るときに必ず本をもちこんで、半身浴をしながら頁を繰ってゐる。
 
近頃読み始めた、柳田國男の文庫全集第三十一巻に収められてゐる「老読書歴」。晩年に書いた書評や序跋を集めたもの。とても面白く、円熟したその書き振りが無類に趣き深い。
 
人が情熱をもつてひとつの仕事に仕へるといふことに対する讃仰の念ひ。
 
人といふものそのものが持つ秘めやかな能力と思ひ遣りのこころに対する素直な驚きと喜び。
 
この諸文章には、柳田の円熟した筆によつて、その味はひが直かに掬み上げられてゐる。
 
民俗学のための他の主要著作に於いては、その学問的性格のため、事物のこと細かな列記が多くならざるを得ないのだらう。
 
しかし、そこにも、その科学的論述の裏に脈打つ詩人の魂を感じることは大いにあるのだけれども、さらにこの『老読書歴』に於いては、最良の批評家・文学者としての彼が如実に表に出てゐる。
 
本への愛、人への愛と想ひ遣りがこの作品には満ち満ちてゐるのである。だから、本の紹介が一冊一冊、次から次へと続くのだが、読み続けてゐて全く飽きることがない。最後まで読み終えてしまふのが、なんだか惜しい氣がした。
 
この柳田の仕事のやうに、人がことばを綴ることそのこと自体への想ひの深さ、考への周到さ、こころ構への厚さを掬み上げるやうな文章を、わたし自身とても読みたく思つてゐたし、そのやうな文章を読んでみたいとおそらく多くの人も希んでゐるのではないか。
 
その希みとは、ことばの魅力と、それを用ひ、それによつて生かされてゐる人間を求める、静かだけれども熱烈な希みである。
 


posted by koji at 11:10 | 大阪 ☀ | Comment(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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