『秋のおはなしペチカ 〜ミヒャエル・エンデの贈りもの〜 』無事終演いたしました。
来て下さつた皆様、本当にありがたうございました。
足利智子さんが奏でる楽器からの響きは、おそらく多くを使ふものでないのにも関はらず、作品に沿ふ最大限の効果を今回も上げてくれたやうに感じました。また、二本のリコーダーとライアーが二羽の鳥たちの奏でるやうな響きを産み出し、わたしたち聴き手を遠い感情の森の奥にまで連れて行つてくれるやうな素晴らしい時間をアレンジしてくれたのも彼女です。
そして、九歳、十二歳、それぞれの年齢でしかおそらく出ないであらう声で、ミヒャエル・エンデの小さなデッサンのやうな作品が奏でられ、わたしたち大人は、その声質だけでもうすでに人といふものの美しさに触れることができるのです。
しかし、最も意味あることは、子どもの頃をとほに過ぎ、すでに〈わたし〉を持つてゐる大人が、その無垢さに挑戦することなのです。
今日も、その最も意味あることであり、最も困難なことに挑戦した諏訪千晴は、本当に見事に、その美しさの領域に足を踏み入れ、ことばのダンスを踊り続けてゐました。
そして、聴き手は、40分の間、言語造形をする人と共に、ことばが切り開いていく道を伴走して行きました。
共に、ことばが打ち披く世界を、見、聴き、触れて行つたのです。
ことばの意味を追つてゐたのではなく、ことばといふものを感覚してゐたのです。
さういふ感覚を多くの大人は忘れてしまつてゐるのに比べ、多くの子どもたちはその感覚をこそ全力で生きてゐます。
その言語感覚を大人が取戻し、また、その感覚を言語化・文章化していくことには、やり手は勿論のこと、聴き手にも、人によつては多くの練習と研鑽が必要です。
今日の公演に向けては、わたしはほとんど稽古に関してお手伝ひをしませんでした。
彼女自身の足で、きつと、この道を登つてゆくことができると信じてゐました。
かういふ言語感覚を基にして舞台作品を批評することは、きつと困難で厄介なことでもあり、他に誰もしないであらう故に、今日、そんな舞台をまざまざと観せてもらへたことへの感謝と共に記しました。
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