2017年09月05日

君待つと わが恋ひをれば 

 
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君待つと わが恋ひをれば 
わが屋戸の すだれ動かし 秋の風吹く  額田王

  
この萬葉の歌を声に出してみる。
 
さうすると、「君待つと わが恋ひをれば」までの響きには、「君」を待つどこか張りつめたやうな激しい想ひの漲りが感じられる。(この「君」とは、天智天皇であられる)
 
その、希みではち切れるやうな、静止のありやうが、吐き切られる息の中で満々と感じられる。
 
しかし、次の「わが屋戸の」でその静かさが崩れ、「すだれ動かし」で女のこころを揺さぶるやうな動きへと移つてゆく。
 
最後に、「秋の風吹く」が響き終わつた後、「もののあはれ」とはかういふものかといふ感覚に包まれる。
 
 
 
川端康成は、戦時中、『源氏物語』を耽読して、そこに平安王朝の雅の男女の、こころの図が描かれ続けてゐるのを、「明るさ」と見た、と日記に記してゐる。
 
非常時の興奮ではなく、平常心の極みがもたらす明るさを見た。
 
わたしも、この非常時に、人のこころの記録である『萬葉集』を常より深く味わつてゐる。



posted by koji at 20:22 | 大阪 ☔ | Comment(0) | やまとうたの學び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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