天心の詩情溢れる文章。
英文で執筆されたものを、
桶谷秀昭氏の飜譯で讀む。
茶が供され、茶が服される。
その一點一事を眞ん中に、
人と人とが、
人と空間とが、
人と自然とが、
人と宇宙とが、
自由な闊達さと安らかな休息の調べを奏でる。
さういふ空間と時間が、
いかにして成り立つのか。
茶室といふ場で、
宇宙の大いなる息遣ひとの調和が、
茶人によつていかに織りなされるのか。
茶といふものをあひだにする、
人と人との磨かれたこころのありやうが、
いかにその空間と時間を無限に深いものにしうるのか。
日本人が美の神にいかにして仕へてきたか。
またそのためにいかにして己れを律することに努めたか。
この本では、
それらのことが磨かれたことばで述べられてゐる。
小册子だが、
あまりにも拔き書きしたい名文に溢れてゐる。
ひとつだけ書き冩してみる。
おのれを美しくしなければ、
美に近づく權利がない・・・
茶人たちは藝術家以上の何ものか、
藝術それじたいにならうとした。
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