吾は、あたら精力を、外の國の事に用ひんよりは、
わがみづからの國の事に用ひまほしく思ふ也、
その勝劣のさだなどは、しばらくさしおきて、
まづ、よその事にのみかかづらひて、
わが内の國の事をしらざらんは、くちをしきわざならんや
よその事にのみかかづらふ、
その口惜しさは、よく分かるやうに思ひます。
なぜ口惜しいか。
それは、よその事にかかづらはつてゐるうちに、
いつしかおのづから己れの内のことを蔑ろに思ふやうになり、
あちらを優に持ち上げ、
こちらを劣に貶めるやうになつてしまふからです。
まことは、優か劣か、といふ問題ではなく、
比較を絶した、
主體性の問題だと思ふ。
つまり、「わたしはわたしである」、
さらには、「わたしはある」といふ、
神の名そのものでもある、このことばを、
深く己れのものにすることにあるのでは・・・。
己れをみづから貶めてしまふことの弊害は、
恐ろしいものです。
個人のことから國家のことにまで、
そのことは云へるやうに思ひます。
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