2017年01月13日

川端康成『雪國』ヲ再讀ス


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何十年ぶりに川端康成の『雪國』を讀む。
二十代の時に讀んだ時もこの作品には強く惹かれた。
しかし、五十代になってゐるいま、
ここに登場してくる女や男の悲しみが、
以前よりいつさう身に沁みるやうに感じる。
 
昨年暮れ、東京の講演会で桶谷秀明氏の話しを聴き、
その時の彼のことばでとても印象的だったのが、
この作品についての感想であつた。
 
作品の最後のところ、
女が気が狂つてしまつた時、
男は己れのなかへ、
夜空に高く流れてゐた天の河が、
さあと音を立てて流れ落ちて來るやうに感じる。
 
そこのところを、
桶谷氏はとりわけ感銘深く受け取られ、
日本文學の粋であるというやうなことを、
仰つてをられたやうに記憶してゐる。
 
自分自身の宿阿を吹き飛ばすやうな、
人の生死の境に出逢ふ時、
天から何かが急に己れのうちに流れ込んで來て、
それによつて、
激しく揺さぶられ、攫(さら)はれ、洗はれ、
そして、生まれ変わつてしまふといふこと。 
わたし自身、若い時には分からなかつたその感覚。
 
今回はいつさうのリアリティーに迫られて感銘深く頁を閉じた。

後の世代の日本人が、
かういつた文学を愛讀していく、
そんな機縁を生み出していくために仕事をしていくのだ。
 


posted by koji at 00:13 | 大阪 ☀ | Comment(0) | 読書ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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