大阪と和歌山、それぞれのクラスで、祈りのことばの後、いよいよ第一講を読み始めました。
14日間連続講義の第一日目、1919年の8月21日、すでに秋の気配を感じさせるシュテュットガルトの爽やかな朝をシュタイナーはじめ約二十人の受講者たちは感じていたのではないでしょうか。
読むわたしたちも、その時の講義の空気感・雰囲気を想像しながら、感じながら、学びを進めています。
その初日の朝、シュタイナーは、「今日、仕事をはじめるに当たり、ひとまず、精神の世とのかかわりを惟(おもん)みましょう」と語り始めます。
仕事とは、文化の行ないとしての、子どもたちへの教育・授業のことですが、わたしたちがする仕事という仕事のことでもありえます。
その仕事をはじめるに当たり、「精神の世とのかかわりを惟みる」。
それは、きっと、この日だけではなく、今日という今日、毎日、行われてほしいことであります。
「惟(おもん)みる」とは、「be(まさに)sinnnen(感官を通して覚える)」です。
ここでの感官とは、肉体の眼や耳ではなく、こころの感官、精神の感官であり、精神の世とのかかわりをそれらの感官を通して覚えていってほしい、とのシュタイナーのまずもっての教師の方々に向けての提言です。
そのために、シュタイナーは、メディテーションのための、祈りのための、ことばをその時に口にしました。
そのことばには、精神の世の方々とわたしたち仕事をする者との間のかかわりが具体的に述べられています。(詳しくは、本書の註にある、参加者のヘルベルト・ハーン氏はじめ何人かの手記を読んでみてください)
人の上に立つ九つのヒエラルキー(位階)の方々のうち、下の、最も人に近い九つ目(天使)、八つ目(大天使)、七つ目(アルカイ)の方々の行ないを毎日、考え、想いにして、こころの内に繰り返すことこそが、わたしたちの仕事を支えていくのです。
肉の目には覚えられない、そのような方々のことをまずは丹念に考えること、想うこと。
その内的な行為の働きたるや、その行為を真摯になしていけばいくほどに、生活に働きかけてくるのが実感されます。
その毎晩毎朝の繰り返しが、こころと精神の感官をもって、そのような方々の働きを覚えること、惟みることへと育っていきます。
そのような上の方々とのつながり、かかわりを意識的に育んでいくほどに、昼間の仕事の質が深まってきます。
そのひとりひとりの人の内的な育みが、社会のなりたちをなりかわらせていく、基(もとい)の力になります。
わたしたちひとりひとりの力は、ややもすれば、未熟に感じられ、また孤立しがちで、だからこそ、まずは、上の方々とのつながりを育むことなしには、もはや仕事を支え、もちこたえることが難しくなり、横の人々とのかかわりもが難しいものになっていきます。
しかし、その上の方々とのつながりの中でこそ、わたしたちは仕事をしていくことができます。
たったひとりで頑張るのではありません。
そのつながりが、わたしたちに力と勇気と光を毎日贈ってくれます。
アントロポゾフィーは、仕事を創っていき営んでいく際の、この観点をとてもとても大事にしています。
この観点で人と人とが集まって仕事をしていくならば、どのような集まりになっていくでしょうか。
人と人との集まりは、まさに生き物であり、こころとこころの織物です。
そこに精神からの力(天使の方からのイマジネーション)、精神からの勇気(大天使の方からのインスピレーション)、精神からの光(アルカイの方からのイントュイション)が注ぎ込まれること。
イマジネーションとは、まずは仕事をしていく上での活きた考え、活き活きとした絵姿、極めて具象的な明瞭なアイデアとして、人に贈られます。
インスピレーションとは、人と人とが和していくための勇気を与えてくれる「ことば」のようなものとして、人の内に響き、人の情を暖めてくれます。
イントュイションとは、わたしたち仕事をする者が、もはや世と分離しているのではなく、世と(教室にいるみんなと、教室そのものと)ひとつになっているような精神的な感覚から始まり、生きることそのものの深みへと降りていくような意志の力の変容として、人に授けられます。
それらは、人と人との集まりに、これからは特に欠かせないものになっていくでしょう。
言語造形をしているわたしにとっても、本当に、欠かせないものになっています。
わたしたちは、仕事に潜んでいる課題をすべて見通している訳ではないかもしれません。
しかし、その課題の大きさ、重さを、あらかじめ感覚(予感)しています。
だからこそ、ヴァルドルフ学校創立の時が迎えられたのでしょうし、わたしたちもこの小さなサークルですが、学びの会に集っています。
課題へのその感覚から始めましょう。
感覚を、予感を、大事に育てていきましょう。
これから、14日間の講義を通して、そして実際の日々の仕事を通して、その感覚に活きた考えを重ね合わせていくことによって、わたしたちはずっと具象的に課題を迎えつつ、仕事をしていくことができるでしょう。
この学びは、きっと、仕事へと、変容していくでしょう。
●『普遍人間学を読む』クラス
日時:大阪市住吉区帝塚山 第二水曜 午後13時30分〜15時30分
和歌山県岩出市 第二土曜 午後13時00分〜15時00分
参加費: 毎回2,500円 6回連続12,000円
※ご参加される前に本のご購入をお願いいたします。
次のサイトでご購入いただけます。
精巧堂印刷所 http://www.seikodo-store.com/show1.php?show=b0031
場所・お問い合わせ・お申込み:
帝塚山クラス ことばの家 http://www.kotobanoie.net/access.html
岩出クラス モモの会 http://momo-society.org/contact.html
講師: 諏訪耕志 http://www.kotobanoie.net/profile.html
下の記事を和歌山岩出のモモの会の方が書いて下さいました。
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=808569589202897&id=230183530374842
アントロポゾフィーから仕事を創ろうとする人と共にいるのは、理想を互いに鼓舞し合いつつ、その理想という考えを現実化しようという意欲に満ち溢れているので、とてもすがすがしいのです。